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解任された空母「セオドア・ルーズベルト」のクロジャー前艦長(2019年11月資料・提供写真、提供:Mass Communication Specialist 3rd Class Sean Lynch/U.S. Navy/ロイター/アフロ)

(文:林吉永)

 去る3月30日、『ニューズウィーク日本版』は、
〈5000人を超える乗組員の検査を行う間、空母セオドア・ルーズベルトは数日グアムに停泊することを余儀なくされるかもしれない〉
のリードに続いて、
〈集団感染に拡大すれば、中国とイランに対する米海軍の即応能力に悪影響を与える恐れがある、と元NATO欧州連合軍最高司令官ジェームズ・スタブリディス退役海軍大将が危機感を訴えている〉
と伝えた。これを受けてマーク・エスパー米国防長官は3月31日、『CBS』の取材に対して、「即応力低下を懸念していない」と強調した。

シビリアン・コントロールの拙劣さを露呈

 一方日本では4月1日、
〈米、抑止力低下に危機感〉
の見出しで報道。「新型コロナウィルス」感染が、米韓・米比の合同演習、米海兵隊の豪派遣中止につながったことを挙げて、
〈太平洋、欧州の安全保障環境に影響する懸念が出ている〉
と指摘した(『読売新聞』)。

 そして4月3日に『CNN』は、トーマス・モドリー米海軍長官代行(当時)が2日、
〈新型コロナウイルスの感染拡大が続く空母「セオドア・ルーズベルト」の(ブレット・)クロジャー艦長について、「稚拙な判断」を下したとして解任を発表した〉
と報じた。ところが4日に『CNN』は、
〈入手した映像には、集まった大勢の乗組員が拍手や名前の連呼でブレット・クロジャー艦長を盛大に送り出す様子が映っている〉
とも伝えたのだ。

 さらに4月8日、日本のメディアは、モドリー海軍長官代行の辞任を報じた(『産経新聞』ほか)。

 この辞任は、うがった見方をするならば、モドリー長官代行が「短絡的な指揮官批判」と「即刻クビ」という内輪もめをさらけ出したことにあるのかもしれない。指揮官の「能力批判」は、専門的知見に基づき、ことの状況を詳細に捉えたうえで行うべきである。この事案は、軍事に関わる米国のシビリアン・コントロールの拙劣さを露呈して、軍事力の指揮・運用の根元的問題を表面化させた。

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