(北村 淳:軍事社会学者)
国際社会が新型コロナウイルスのパンデミックで麻痺状態に陥っている現時点においても、中国による海洋覇権拡張行動はとどまるところを知らない。
中国艦が米軍哨戒機にレーザー照射
ワシントン州での新型コロナウイルス感染者の発生(この段階ではケアセンターなどの限られたクラスターでの発生であった)を受けて、2月26日、トランプ政権はようやくアメリカ国内での新型コロナウイルス対策に乗り出す姿勢を示し始めた。
ちょうどその日(日本時間では2月27日)、米海軍当局は正式に中国に抗議をした。10日ほど前に、中国海軍軍艦がアメリカ海軍哨戒機に対してレーザー照射を行うという事件が発生しており、その調査が完了したのだ。
米海軍によると、グアム沖公海の上空を警戒飛行中であった米海軍P-8Aポセイドン海洋哨戒機(沖縄が本拠地)に対して、同海域を航行中の中国海軍052D型駆逐艦「呼和浩特」(2019年に就役した新鋭艦)がレーザーを照射した。このレーザーは肉眼では感知できないものの、各種計器により察知することができたという。
場合によっては乗員や計器類にダメージを与えることになる各種レーザーの照射は米中海軍間ならびに多国籍海軍間の取り決めによって禁止されている。米海軍当局は、「今回のレーザー照射は国際的取り決めに対する重大な違反であると同時に危険きわまる行為であり、決して容認できない」と厳重に抗議をしている。