BCGの接種がこの違いに寄与しているとの説がある。ポルトガルはヨーロッパでもBCGの摂取を義務付けているために感染者数が少ないとされる。確かに隣国であるスペインに比べれば感染者数、死亡者数共に少ない。だが、それでもアジアに比べれば1桁多い。同じBCGを接種していないオーストラリアの状況がシンガポール程度であることを考えると、BCGだけが原因とも考えにくい。オーストラリアが夏季であったことも感染状況に関連していそうだ。

 いずれにせよ、この問題におけるアジアと欧米の違いは明白である。新型コロナウイルスの感染が中国で発生したことを考えると、この問題が一応の収束を見た後に欧米で黄禍論(欧米にはそのような土壌がある)が沸き起こる可能性がある

 もちろん政府や識者はそのような偏見を否定することになろうが、民衆の心に黄禍論が台頭することは必至と思う。それは様々な形で噴出することになろう。日本の立場は微妙なものになる。それは欧米人から見れば中国人も日本人も同じように見えるからだ。

 欧米の民衆の間でグローバル化に対する拒絶反応が沸き起こる可能性がある。その行方を今の時点で見通すことはできないが、この問題がこれまで続いてきたグローバル化にとって逆風となることは確実である。新型コロナウイルスはアジアと欧米の間に様々な形の溝を作り上げる可能性がある。

 22世紀の歴史の教科書は、2020年におきた新型コロナウイルスの蔓延はそれまでの世界を大きく変えた出来事であったと記載することになろう。