コロナウイルスの感染拡大によって機能停止状態に陥りつつある日本経済。ホテルや飲食店など、人が集まる産業は甚大な打撃を受けている。もっとも、逆に需要が伸びている分野もないわけではない。人工呼吸器やマスク、アルコール消毒薬などは最たるものだが、意外な産業もコロナ禍の中で注目を集めている。孤独死や殺人現場などの室内を清掃する特殊清掃業界だ。特殊清掃現場に特有の悪臭を消す技術が空間の除菌につながるという期待のためだ。特殊清掃業の草分け的存在である友心まごころサービス(福岡県久留米市)の岩橋ひろし代表に話を聞いた。(聞き手は結城カオル)
“現場”の完全消臭を目指してきた
──コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、問い合わせが増えているという話です。
岩橋 ひろし氏(以下、敬称略) 中国で新型コロナウイルスの感染が問題になり始めた1月上旬から、地元の葬儀店や飲食店など、人の集まるお店から、特殊清掃で使っている消臭のための薬剤が除菌に使えないかという問い合わせを受けるようになりました。
孤独死したお部屋を清掃する場合、僕たちは床や畳をはがして悪臭の元となる体液や血液を除去します。それでも、完全に取りきることのできない悪臭には薬剤を噴霧し、悪臭の元になっている菌を分解、不活性化します。これは、言うなれば除菌と同じです。