イギリスのボリス・ジョンソン首相は、先週「集団免疫ができるまで一定の感染を容認する」という方針を表明した。その根拠となった「イギリスでは新型コロナで25万人が死亡する可能性がある」というインペリアル・カレッジの報告書が国民に衝撃を与えた。

 この戦略は大論争を呼び、全世界から「イギリス政府は25万人を見殺しにするのか」といった批判が殺到したため、今週になってジョンソン首相は軌道修正し、公立学校の休校などの封じ込め措置をとった。

危険なのは感染拡大ではなく医療の崩壊

 しかしこういう批判は誤解である。集団免疫はインフルエンザなどでも使われる考え方で、たとえば基本再生産数2の感染症では、集団の半分が予防接種で免疫をもてば、実効再生産数は1になり、感染の拡大は止まる。

 ワクチンのない新型コロナでは、予防接種の代わりにゆるやかに感染を広げる。コロナウイルスの基本再生産数は、WHOの推定では1.4~2.5だが、2とすると人口の半分が感染したとき感染の拡大は終わる。

 これ自体は避けられないことで、日本でいうと6000万人が免疫をもって3万人が死亡するまで感染は止まらない。これも予防接種と同じで、インフルエンザの予防接種率は約25%で、去年だけで3000人が死亡している。

 これを政府が「75%が感染するのを容認する」とか「毎年3000人死ぬのはしょうがない」と発表したら大騒ぎになるだろうが、どう表現しようと集団免疫とはそういうものだ。

 問題は感染が拡大することではなく、それが病院の処置能力を超えることである。特に新型コロナの場合は、重症患者にICU(集中治療室)で人工呼吸などの処置が必要になる。感染爆発が起こって患者が激増すると、ICUのベッド数が足りなくなって医療が崩壊する。日本のICUベッドは約6500なので、これを超える患者が一挙に発生すると医療は崩壊する。