(山田 珠世:上海在住コラムニスト)
2月末から3月初旬にかけての日本の状況は、まるで1カ月ほど前の中国を見ているようだった。
連日報道される「ドラッグストアやスーパーでマスクが品薄に」「トイレットペーパーの売り切れが続出」といったニュースは、新型コロナウイルス感染拡大が生活に支障をきたしている現状を表していた。それまで日本の友人らは、上海に住む筆者を心配してくれていたが、状況は一変し、友人たちの不安の声を聞くようになった。東京に住む友人は「社会の雰囲気が殺伐としている」と話してくれた。
日本人の混乱に拍車をかけたのは、安倍首相が2月27日に発表した、全国の小中高校に対する臨時休校の要請だろう。3月は卒業式や修了式の時期であるにもかかわらず、1日の余裕しか与えず休校要請に踏み切ったのだから、批判が噴出したのはやむを得ない。
一方、中国でも2月5日、全国の小中高校に対し、2月末まで学校の再開を禁じる指導通達が発表されている(上海市の小中高生は2月16日まで冬休みだった)。幼稚園・保育園も同様に、一律休園とした。
日本と異なり、中国には乳幼児や小学生の受け入れ施設が一切ない。にもかかわらず、中国ではみんなが「当然の措置」として受け入れた。中国と日本では、なぜ反応が大きく違ったのだろうか。
学童保育所がない中国
中国では夫婦共働きが当たり前だ。とりわけ上海では、祖父母が孫の面倒を見るケースが多い。子どもが小学校を卒業するまでは、幼稚園や学校の行き帰りも、塾や習い事もすべて大人の送り迎えが必要な上海では、ほとんどが祖父母に頼っている。それができない場合は、家政婦を雇うのが一般的だ。そんな社会的背景があるからか、中国には学童保育所が存在しない。