月・星・太陽の動きから編み出された暦。「13日の金曜日」はなぜ世界中の人に忌み嫌われているのか。「バラモンの塔」が告げる世界の終末はいつなのか。暦と占いのつながりを数学の論理から読み解く。(JBpress)

(※)本稿は『暦と占い 秘められた数学的思考』(永田久著、講談社学術文庫)より一部抜粋・再編集したものです。

13日の金曜日

 金曜日Fridayは、ローマ神話のヴィーナス(ウェヌス)のように、海の国から生まれ、もっとも慈悲深く美しいとされる愛と美と豊穣の女神フレイアFreijaに捧げられている。つまり『「フレイアの日」がフライデー』となったというわけで、この日は、この花を愛し、音楽を好む愛と春の女神に、若者たちが願をかけ、恋の成就を祈る日なのである。

 ちなみに、オーディンの后、女神フリッグFriggは、ドイツ語の「淑女」Frauの語源で、結婚をつかさどり、未来を予知する神として知られ、ドイツの若い娘たちは、気品ある女神フリッグを理想の女性と考えているものが多いという。そのせいか、「フレイアの日」は女神フリッグと混同されて、北欧では「フリッグの日」とも呼ばれている。

 今日でも世界中で「13日の金曜日」を忌みきらう人が多い。キリストが過越(すぎこし)の日「ニサン月14日」の夕方、ヤコブの家で12人の弟子と最後の晩餐をともにしたときの出席者の一人ユダの裏切りで、キリストは磔刑(たっけい)になった。そのことから、西欧では今日でも13という数が不吉とされている。

 そのせいか、西欧には「13恐怖症」という言葉まであり、「悪魔の1ダース」といわれる縁起の悪い13の数に病的な反応を示す人がいる。

(13日の)金曜日が嫌われるのは、キリストの復活した日を主の日として、その日を日曜日と定めたが、キリストは磔刑にされて3日後に復活したというので、逆算すると磔刑の日が金曜日にあたるからだといわれている。

 またアダムとエヴァが神に背いて、蛇に誘惑されるまま、禁断の「知識の木の実」を食べたのが金曜日だったともいわれ、北欧では金曜日を「魔の安息日」といって、魔女が会合して愛と美の女神フレイアを追い払う日だといわれている。

 現在でも西欧では、13人で会食すると、その一人が年内に死ぬという迷信が残っている。イタリアではクジの番号に13がなく、トルコでは13という数字を使っていないという。