人材育成担当者であれば、1度はあのモヤモヤ感を感じたことがあるはずです。それは「この研修は本当に意味があるのだろうか……」というモヤモヤ感です。なかなか成果が見えない仕事だからこそ、自分の仕事が役立っているのかわからない。一方で、経営からは「研修・教育に意味はあるのか? 費用対効果を示せ」と言われることも。さらに、研修を受講した社員にアンケートを取ってみると「講師の質が良くない」、「時間が長すぎる」など、かなり好き放題に言われることもありますよね。担当者としては、きちんとあれこれ理由を考えて数カ月かけて準備してきたのに、本当に労力が報われることは案外少ないものです。
 そこで、人材育成担当者が仕事で成功を確信できる1年にするという思いをこめて、今回は2020年の人材育成トピックについてまとめてみました。

人材育成担当者の力が試される年になる

 これからは人材育成が会社の成長を左右することを、私は確信しています。なぜならご存じの通り、日本では有効求人倍率が上がり続けています。2020年の1月現在は1.6倍程度ですが、一説によれば今後2.0倍以上になるとも予想されています。すでに採用の現場では、求人票を出しても誰も応募してこない、紹介会社に依頼しても良い人材が見つからないうえに手数料も上がり続けているという現象が発生しています。「良い人材も採れないし、人件費も上がり続ける」。こんな時代だからこそ、我々人材育成担当者が輝くチャンスです。

 こうした状況の中では、いまいる社員の能力を最大化することが必要です。限られた人員で業績を上げるには、社員のマルチスキル化や高度化が不可欠だからです。

 単純に考えてみましょう。1人の社員が1.5人分の仕事をこなせるようになれば、生産性は1.5倍です。また、1時間かかっていた仕事を30分でできるようになれば生産性と効率が2倍です。仮に人手不足のために年収600万円の社員1名を紹介会社経由で採用した場合、手数料は35%で210万円の採用コストがかかります。一方、現在在籍している社員に対して新たな能力を獲得してもらうために継続的なトレーニングを行ったとすると、その費用は1人当たり数万円~10万円で済みます。つまり、生産性を基準に考えてみると、採用コストをかけるよりも、人材育成に費用をかけた方が合理的であることがわかります。

 人材育成担当者はこれまで、人材育成の合理性や重要性を論理的に示すことができなかったのではないでしょうか。経営陣から「こんなに研修をやる意味があるのか? 今年は予算削減だ!」と言われ、予算を削減されるがままに過ごしてきた方も多いかと思います。また、本当にやりたかった研修が実施できなかったといった、苦い思いもしてきました。

 だからこそ、いま人材育成担当者が会社に本当に貢献できるこのチャンスに逆襲をしかけていくべきなのです。