前回の記事「世界が驚愕、戦争と平和の概念を変更した米国」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59306)では、米軍が平和・戦争二元論から脱して、競争が連続している「競争継続」という世界観に移行しつつあることを紹介した。
米統合参謀本部が作成した概念をできるだけ正確に伝えようとしたため、特に軍事問題に関心がある方以外には、読みにくい内容であったかもしれない。
しかし、米軍がこのように世界の見方を変えている背景には、ビジネス界の方々にも大いに関係がある「デザイン」という考え方の潮流が存在するので、今回はそれについて解説してみたいと思う。
作戦計画から作戦デザインへ
NATO(北大西洋条約機構)諸国にしろ、日本にしろ、元共産圏以外の多くの国の軍隊は、米軍式の意思決定プロセスを取り入れて、作戦を計画してきた。
それは、軍を動かすための作戦計画を立てるに当たって、まず達成すべき任務を明らかにし、その達成に向けた複数の方法を比較して、採用する案を決定したうえで、綿密な計画を練り上げるという方法である。
作戦の目的が、戦場で敵の軍隊を撃破することだと、はっきりしている時は、それでよかった。
しかし、ソ連との冷戦が終わり、アフガニスタン戦争、イラク戦争などを戦う中で、米軍には迷いが生じてきた。
部隊が個々の戦闘に勝つだけで、軍隊が国家に望ましい結果をもたらすことができるわけではないと、痛感させられたからである。
そのような中で、米軍の中に生まれてきた新しい考え方は、まず計画(plan)を作成して、その通りに戦うのではなく、時々刻々と状況が変化する中で、作戦を「デザイン(design)」していくことであった。
計画と「デザイン」は、どこが違うのだろうか。