2月2日、中東地域における情報収集活動のために、護衛艦「たかなみ」が横須賀港を出港した。
この派遣にあたって話題になったのは、派遣の根拠が自衛隊法に規定された自衛隊の行動等ではなく、防衛省設置法に規定された防衛省の所掌事務の一つ「調査・研究」であったことである。
大雑把に言えば、自衛隊法は、自衛隊が有事に機能するようにするための法律であり、防衛省設置法は、平時の行政機関としての防衛省について定めた法律である。
中東における日本関係船舶の安全補確保ために今回の派遣が行われるのだとすれば、中東に何らかの危険があるということであり、そこに平時を前提とした「調査・研究」という所掌事務を根拠にして派遣するのは、趣旨が違うのではないかという疑問が呈されたのである。
現代においては、明確な有事とは言えない「いわゆるグレーゾーンの事態」が「長期にわたり継続する傾向にあり」「平時から有事までのあらゆる段階における活動をシームレスに実施できることが重要である」と、一昨年末に政府が策定した「防衛計画の大綱」も明確に述べている。
今回の「たかなみ」派遣の根拠を「調査・研究」とすることの適否はさておき、いずれにしても今やグレーゾーンの事態が常態化している一つの表れだと見ることができよう。
このような認識は、日本独自のものではなく、世界の主要国も同様の認識の下に、それぞれの軍隊の戦力構成や運用要領を見直しつつある。
それでは、世界最強の軍隊を持つ米国では、どうなのだろうか?
米軍は、新しい国際安全保障環境に対応するため、新しい統合ドクトリンを開発中であり、早ければ昨年秋にも公表されると見られていたが、現時点ではまだ公表されておらず、軍種間の調整が難航しているようである。
それでも、ドクトリン策定の方向性を示すものとして、2018年3月には、「インテグレートされた戦いのための統合コンセプト(Joint Concept for Integrated Campaigning)」が統合参謀本部によって公表された。