年頭記者会見の質疑応答で、記者を指名する文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 1月14日、文在寅大統領の年頭記者会見が行われた。その中身を見て、現在の韓国の内政、経済、外交上の懸案、およびこれに対する文在寅氏の政治姿勢がはっきりと分かった。

 文在寅氏には韓国の諸懸案について、立場の異なるものとの話し合いを進めよう、立場の違いを埋めようという考えはない。「あくまでも我が道を行く、それは正しい道であると国民を納得させるのだ」という態度が一層鮮明になったと言える。

 言葉では対話や交渉を呼びかけていても、そこには妥協はなく、自己の正当性を訴えるだけである。文政権を論じる際には、あくまでも行動を見るべきであり、言葉を信じてはいけないことを再確認することとなった。

 また、記者会見に臨んだ取材陣も、文在寅大統領が言いたいことを引き出す質問が中心であり、文在寅氏の姿勢を批判したり、確認を取ったりするものではなかった。文政権の言論に対する締め付けが浸透していることを印象付けるものであった。

元徴用工問題で日本側の頑なな姿勢を批判することに終始

 元徴用工問題について文在寅氏が述べたことは、

〇 韓国政府は既に数度にわたって解決策を提示した

〇 国会は法案を発議、原告の団体も日韓共同で協議することを提案している

〇 日本も解決策を提示しながら韓国と一緒に考えるべき

〇 もっとも重要なのは被害者たちの同意を得る解決策である

 ということである。しかし、この立場は日本側とは全く相容れない。日本はこの問題は1965年の日韓請求権協定ですべて解決済みというものであり、あくまでも韓国国内で処理せよというものである。