小沢が政治改革の旗を振ったのは「結局は竹下派内の権力闘争ではないか」との指摘は絶えない。これについては前稿で紹介したのでここでは触れない。

 最近、小選挙区制に対する批判が多くなってきた。「政治家が切磋琢磨しない」「公認さえもらえれば議員になれるので議員の質が劣化している」「中選挙区時代は得票率が20%ぐらいでも当選できた。今はそうではないから、個性的な議員が出てこない」など枚挙に暇がない。しかし、中選挙区制に戻す動きはまだまだ鈍い。良くも悪くも、政権交代を目の当たりにした国民が、中選挙区制への回帰を支持するとは考えにくい。小沢の主張が日本政治の基本的枠組みになっている点は冷静に評価しなければならない。50年の議員生活で小沢が成し遂げた最大の実績は、2度にわたる政権交代というよりも、小選挙区制を導入したことだと言っても過言ではない。

岸と小沢の共通認識「政党こそが権力の源泉」

 一貫して政党側で活動してきた小沢が、なぜこれほどまでに強い権力を保持してきたのか。これは、究極的には戦後の日本政治の仕組みにたどりつく。要は政党に権力が集中しているのが戦後日本の政治体制であり、政党内で力を持てば必然的に権力を持てる、というシンプルな原理を小沢は知り尽くしているのだ。

 戦後の日本政治は大きな反省の上に出発している。それは昭和初期以降、台頭する軍部を政党が抑えられなかった、という反省である。日本国憲法がそのあたりを汲んで制定されたかどうかの個別議論はさておき、権力が政党に集中する体制下で戦後政治は展開していく。

 霞が関官僚が実質的に政治を支配してきたという側面も否定できないが、それは仕組み上の話ではない。

 繰り返しになるが、国政選挙で多数を占める政党が政権を担う。政党が選挙で勝利して初めて政権を獲得できる。首相だろうが、閣僚だろうが、最終的に政党が政治を動かす——。この基本原理に忠実なのが小沢なのである。