(黒木 亮:作家)
これまでたびたび週刊誌などでも取り上げられながら、決定的な証拠を突き付けるまでには至らなかった小池百合子・東京都知事の「学歴詐称疑惑」。アラビア語やエジプト事情に疎い日本のメディアは小池氏の学歴詐称疑惑の追及に消極的で、このままでは、この疑惑は、永遠に疑惑のまま終わってしまうかもしれない。
小池氏の「お使い」レベルのアラビア語を聞けば、カイロ大学卒業という学歴は即座におかしいと分かる。筆者はアラビア語を学び、エジプトの大学(カイロ・アメリカン大学大学院中東研究科)を卒業した者の責務として、複数回の現地取材を含む調査で疑惑を徹底検証した。その結果、小池氏がカイロ大学の卒業要件を満たして卒業したという証拠、印象、片鱗は何一つ見出せなかった。
これまで他のメディアが報じてこなかった小池氏の「学歴詐称」を徹底検証するレポートの第4弾をお届けする。
(前回記事はこちら)
徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈3〉 エジプトで横行する「不正卒業証書」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58857
編入に厳格な規定を設けるエジプトの国立大学
小池氏は著書などで1972年10月に1年生としてカイロ大学に入学したとしている。しかし、石井妙子氏による『小池百合子「虚飾の履歴書」』(「文藝春秋」2018年7月号、以下『虚飾の履歴書』)では同居女性が、「小池氏が入学したのは1973年10月で、2年生への編入だった。小池氏は『父がハーテム氏(筆者注・当時エジプト副首相兼文化・情報相)に関西学院の数ヶ月間とカイロ・アメリカン大学の数ヶ月間を足して1年間とみなしてくれと頼んで認められ、授業料も入学金も無料になった』と喜んでいた」と証言している。これは同居女性の1972年11月19日付の手紙に綴られているそうである。
『虚飾の履歴書』では、当時別の大学に通っていた日本人女性も小池氏が1973年10月にカイロ大学の2年に編入したことに驚いたと書かれており、筆者が取材した複数のカイロ大学の日本人卒業生も小池氏が2年に編入したことを記憶していた。
カイロ大学を含むエジプトの国立大学への編入に関しては、厳格なルールが設けられている。編入をするには、エジプトの国立大学のカリキュラムと同等の内容・時間数で他大学で単位を取得し、かつ一定以上の成績を得ていることが必要である。この点はカイロ大学のCentral Transfers Office(中央編入事務所)で確認を取った。2016-17年度の場合は、工学部と医学部の場合は他大学でイムティヤーズ(excellent)以上、実務系学部の場合はジャイイド・ジッダン(very good)以上、理論系学部の場合はジャイイド(good)以上の成績を取っていることが必要である。