赤ちゃんの脳に硬膜下血腫、眼底出血、脳浮腫などの異常が見られたとき、今の日本ではその3つの症状から、まず「虐待」の疑いが持たれます。そして医療機関は念のため、警察や児童相談所に通報し、そこから親子分離や家宅捜索などが始まるのです。

 そんな中、多くの保護者は「つかまり立ちから転倒しました」「ベッドから転落しました」また、「お昼寝をしていたら突然容体が急変したんです」と説明し、「私は決して虐待などしていません!」と一貫して否定します。つまり、事故や病気が原因であるはずだという主張です。

 しかし、警察や児童相談所は、「虐待をした親が素直に真実を話すはずがない」と疑いの目を向け、親子は引き離されたまま捜査は進行。そして、否認したまま「傷害」や「殺人未遂」という罪名で刑事訴追される人が後を絶たないのです。

 子どもがケガや病気で苦しんでいたら、一番心を痛めるのは保護者でしょう。愛情をもって大切に育ててきたのに、一方的に虐待を疑われてしまう・・・。

 私はこれまで何人もの方々に話を聞いてきましたが、その状況はあまりに辛く、過酷なものでした。

娘への放火殺人を疑われる過酷な体験

 そんな彼らを励まそうと、この日、一人の女性が応援に駆け付け、自身の体験を語りました。

 青木惠子さん(55)。「わが子を手にかけた」として殺人罪に問われ、無期懲役の判決を受けながらも、再審請求で完全な無罪を勝ち取った冤罪被害者です。

青木惠子さん(筆者撮影)

 青木さんは逮捕時から否認していたそうですが、自白を強要され、2016年に再審請求が認められるまで、20年以上もの間、拘置所や刑務所に収監され、自由を奪われていたのです。