マット安川 今回は政治ジャーナリストとして40年間以上、日本の政治を見つめてこられた岩見隆夫さんを迎え、東日本大震災や統一地方選挙について、なかでもリーダーシップの重要性とメディアの偏重報道について詳しくお聞きしました。

菅直人は“超非常事態”の日本にふさわしいリーダーか?

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:岩見隆夫/前田せいめい撮影岩見 隆夫(いわみ・たかお)氏
毎日新聞客員編集委員。1935年旧満州大連に生まれる。京都大学法学部卒業後、毎日新聞社に入社。論説委員、サンデー毎日編集長、編集局次長を歴任(撮影:前田せいめい、以下同)

岩見 最近『非常事態下の政治論』という本を上梓しました。日本の現状への危機感から書いたものですが、東日本大震災でこの国はさらに深刻な“超非常事態”に追い込まれたと言わざるを得ません。

 統一地方選には大いに注目していました。結果次第で日本の政治全体が動くんじゃないかという予感があった。政権与党の民主党が、都知事選に公認候補はおろか推薦も出せない体たらくでしたしね。しかしそうした関心も、震災に霞んでしまった感じです。

 このような難局で何より重要となるのは、リーダーの力量です。リーダーが相応の能力を備えた人物でないと、国はえらいことになります。

 しかし現総理の菅(直人)さんは、どうも頼りない。今のような非常時に国を任せられる人物ではないでしょう。鳩山(由紀夫)さんもそうでしたが、菅さんからは総理大臣として国の運命を担うという決意や覚悟が伝わってきません。

 国民がリーダーからそうした力強いものを感じ取れないから、大連立みたいな話がしばしば取り沙汰されることになるんです。

 総理に欠かせない資質のひとつに、歴史から学ぶ能力ということがありますが、菅さんはそのへんも危うい。1月の施政方針演説で、彼は「第3の開国」と言いました。第1は「明治の開国」、第2は「戦後の開国」で、今度は3度目というわけです。

 しかし、これには首を傾げざるを得ません。明治維新はともかく、敗戦は開国なんて生やさしいものじゃないんです。そんな理想に燃える余裕などない、まさにどん底でした。彼はもっと歴史を学ばないといけません。