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 働き方改革がはじまったことで、残業を減らしたり、有給休暇を取らせたりするために、生産性を向上させようと苦労している企業は多いです。「生産性の向上=業務の効率化」と考えている方も多いようですが、生産性を向上させる方法は、業務を効率化する以外にもいろいろとあります。また、助成金を活用することで、それらの取り組みにかかるコストを削減することもできます。では、「生産性の向上」とはどういうことなのか、具体的な対策と合わせて見ていきましょう。

「業務の効率化」と「生産性の向上」の違いとは?

「業務の効率化」とは、同じ業務を少しでも早く、コストをかけずに行う取り組みのことです。つまり、時間とコストを少しでも節約することで、人件費を含む総コストを抑えることを指します。例えば、残業コスト削減のために夜8時以降は消灯し、施錠をすることで従業員の方には帰宅してもらう、といった具合です。

 一方「生産性の向上」とは、現在のスタッフや設備などの資源からいかに成果を伸ばすか、ということになります。つまり、今のスタッフの態勢でどれだけ粗利を増やせる仕組みを作れるか、という点にフォーカスされます。

 整理すると、「業務の効率化」は「抑える・切り詰める」ことに重点が置かれており、「生産性の向上」は、「伸ばす」ことに視点が置かれているということです。

「業務の効率化」を行えば、時間に余裕が出て、他の大切な業務ができるようになるわけですから、 “生産性の向上のひとつの手段”であると言えます。ですが、これだけでは「生産性の向上」は難しいとも言えるでしょう。

「生産性の向上」を図り、業績を「伸ばす」には、具体的に次の3点が必要です。一つひとつ解説していきましょう。

(1)業務情報の共有化
 スタッフ一人ひとりが今どれだけの仕事を抱えていて、進捗がどうなっているのかを、朝礼やメール、チャットなどを使って、管理職だけではなくスタッフ全員で共有するようにします。進行が遅れている業務のフォローなど、人材を柔軟に配置すれば、グループ全体の業務をスムーズに進めることができるでしょう。

(2)業務の平準化
 進行が遅れている業務のフォローをするためには、マニュアルを作成し、誰でも対応できる態勢を整えておくことが重要です。いわゆる「仕事の属人化」をどれだけつぶせるかがポイントです。

(3)集中タイムの確保
 業務中に電話がかかってきたり、誰かから相談を持ちかけられたりすると、集中力が途切れてしまい、元のペースへ戻すのに苦労することはありませんか? 必要なこととは言え、これではグループ全体の生産性が下がってしまいます。

 そこで、スタッフごとに“集中タイム”を確保し、その時間は電話も取り次がず、話しかけることもせずに、今行っている業務に集中してもらうようにします。企画書の作成などの重要な業務は、この時間に行えば短時間で成果を出してもらうことができ、生産性の向上につながります。

生産性を向上させるために助成金を活用しよう

 このように、生産性を向上させるには、「人」にフォーカスすることがカギとなります。個々のスタッフがスキルアップすれば、生産性への効果はさらに高まるでしょう。

 そのために、助成金を利用するというのも一つの手です。厚生労働省が管轄している助成金で、「人材開発支援助成金」や「キャリアアップ助成金」といったものがあります。例えば、従業員の方が自主的に研修などに行く際、有給で休暇を与えることで助成される「教育訓練休暇付与コース」や、アルバイトを正社員に転換することで助成される「正社員化コース」などです。

 ご関心があれば、まずはどのような制度があるのか知るためにも、ぜひ、お近くの社会保険労務士へご相談されることをお勧めします。


山口善広
社会保険労務士有資格者

著者プロフィール
 

HRプロ編集部

採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。