最大のメリットは入社した社員の孤立を防げること

 もちろんリファラル採用の良い面もあります。会社側から見た「社員の紹介だから安心」という面や、入社する側から見た「自分の知っている人が先に社員として入社しているから安心」という理由の他に、一番のメリットは、「入社した社員を孤立させない」という点にあると私は思います。

 ここ最近、私が顕著に感じるのは、他人に気を配れる余裕のある人が減ってきているということです。隣の席の人が業務で悩みを抱えていても全く気づかない、ということが増えました。皆自分の仕事や家庭のことで精一杯ということもあるでしょうし、社員同士のコミュニケーションの取り方もSNSを使った方法が増えたので、昔であれば「AさんとBさんがトラブルで揉めている」「CさんがDさんに叱責されている」とわかった場面も、今では全てSNS上で行われ、表面上のオフィスは静まり返っている、という職場も多いと思います。そうなると、余程注意深く観察していないと、会社側もそうした社員同士のトラブルに気づけません。

 そのような職場環境で、入社前から知っている社員が一人でもいたら、お互いに「どう? 会社に慣れた?」「悩んでいることない?」と直接声をかけたり、「恥ずかしくて誰にも聞けないレベルの仕事のこと」を聞いたりできるでしょう。弱みを見せられる人、愚痴や話を聞いてもらえる人がいることで、その本人が「孤立しない」環境を作れます。

 なぜこのようなフォローが必要かというと、今の中途採用は「即戦力」が当たり前の時代だからです。「周囲の評価などに気にしない」というマイペースな人はいいのですが、「とにかく早く結果を出して認めてもらわないと」という人は焦って空回りをしたり、わからないことも恥ずかしくて周囲に聞けなかったりして、結果的に孤立し、つまずいてしまうことも多いのです。

 リファラル採用は、活用の仕方によって「黒字社員が黒字社員を呼びこむ」場合もあれば、「赤字社員が赤字社員を呼びこむ」場合もあります。従って、通常の採用方法よりも、より丁寧にマネジメントをすることがポイントではないかと思います。

          著者プロフィール

 

前田 康二郎氏

流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント/作家 前田 康二郎

 

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)も運営している。

 

流創株式会社
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