(北村 淳:軍事社会学者)
中国共産党は指令を発してフィリピン国内の電力供給を全面的に停止させることができる──フィリピン国会に対する調査報告書でそんな状況が指摘されていたことが、アメリカの報道機関にリークされた。
停止される可能性があるフィリピンの電力供給
中国がフィリピン国内における電力供給をストップしてしまうとはどういうことなのか?
フィリピンの電力システムのハードウェア自体はフィリピン政府が保有しているが、その電力システムの運用は民間企業の「National Grid Corporation of the Philippines」(以下、NGCP)が請け負っている。NGCPに対する最大の出資者は中国の電力配送会社、国家電網公司(http://www.sgcc.com.cn)であり、出資比率は40%に達している。
国家電網公司は中国の国有企業で、世界最大の電力会社である。海外企業への投資も盛んに行っており、NGCPの他にも、オーストラリアのクイーンズランド州とニューサウスウェールズ州のガス電力供給会社JEMENAの株式の60%、オーストラリア南部の送電会社ElectraNetの株式の41%、オーストラリアのヴィクトリア州の電力エネルギー会社AusNet Servicesの株式の19.9%、ポルトガルの電力会社RENの株式の25%を保有している。また、2017年にはブラジルの発電送電会社CPEL Energiaに34億米ドル相当の資金をつぎ込んで経営をコントロールするに至っている。