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  2017年に政府主導でスタートした「休み方改革」。休み下手と言われる日本人の意識を変えるための取り組みであり、真の働き方改革を実現させるための第一歩と言ってもいいだろう。今や多くの企業がさまざまな形で休暇取得を推進する施策を導入し始めており、少しずつ成果も出始めている。そこで本連載では、「休み方改革」の現状や展望、施策、企業の導入事例などを紹介し、改革がもたらす新しい働き方を探っていく。

休み方を変えれば、働き方も変わる

 今年の4月から「働き方改革関連法案」が順次施行され、働き方改革の波が着々と広がりつつあるが、あなたは休むことに後ろめたさを感じたり、休日もついつい仕事について考えてしまったりしたことはないだろうか。仕事熱心な日本人は、上手に休みを取れない“休み下手”とも言われている。

 政府も日本人が休み下手だと認識している。2017年に有給休暇を積極的に取得したり、長期休暇を見直したりと、官民一体となって休暇が取りやすい環境を作っていく取り組みである「休み方改革」を提案した。

 働き方改革が労働生産性の向上や長時間労働是正など、働く時間にフォーカスした改革を指すのなら、休み方改革は休む時間にフォーカスした取り組み全般を指す。働き方改革と休み方改革は、方向性こそ違うが、理想的なワークライフバランスの実現という大きな目標は共通しており、両輪をバランスよく走らせることが重要なのだ。

長時間労働の是正と有休取得率向上へ

 そもそもなぜ今、休み方改革が求められているのだろうか。その背景には、日本社会や日本企業が抱える問題点がある。その一つが、長時間労働の常態化だ。厚生労働省の調査によると、日本は欧州諸国と比べて年平均労働時間が長く、時間外労働(40時間/週以上)者の構成割合についても、特に週49時間以上働いている人の割合が高いことがわかっている。長時間労働が起こる要因としては、人手不足や業務過多、上司のマネジメント不足、企業全体の雰囲気など、さまざまなことが考えられるが、長時間労働が続けば、業務効率の低下はもちろん、心身の不調や、最悪の場合は過労死など、リスクも大きくなっていく。こうしたことからも、労働時間の短縮や休暇の見直しは喫緊の課題と言えるだろう。

 2つ目の背景として挙げられるのが、日本人の有給休暇取得率の低さだ。厚生労働省が2017年に行った調査によると、日本人の有給取得率は51.1%。また、エクスペディア・ジャパンが2018年に世界19の国と地域の有職者約1万1000人を対象に行った有給休暇や長期休暇に関する国際比較調査においても、日本人の有給休暇取得率は50%、取得日数は10日と、いずれも3年連続で最下位となった。さらに有給休暇の取得に罪悪感があるかどうかという質問に対しては、日本人の58%が「ある」と回答し、これも最多となっている。こうした傾向は、働くことを美徳とする日本人特有の意識や、自分だけ休みづらいという同調圧力などに起因しているとも言えるだろう。いずれにせよ、日本人全体が意識を変革させなければならない。