(水野 壮:NPO法人食用昆虫科学研究会副理事長)
カマキリのオスは、交尾時にメスに食べられてしまうことがある。オスはメスから捕食されつつも、交尾を継続している。このように昆虫は身体部分の除去や損傷をしても、(少なくとも傍目からは)通常と変わらずに行動し続けることがある。
これは、脊椎動物が痛みに対して行う振る舞いとは大きく異なる。そのため、昆虫は痛みを感じていないものとみなされてきた。
しかし、カマキリの羽や脚を切除しようとすれば、あたかも痛みを排除するかのように攻撃的になる行動が見られる。バッタも、カマキリなどに食べられる際は手足や触覚をバタつかせ、もがき苦しんでいるようにも見える。
はたして昆虫は、痛みを感じているのだろうか。
「痛みセンサー」は持っている
近年の研究では、キイロショウジョウバエを皮切りに、さまざまな昆虫が、痛みを刺激として受け取るセンサーを保持していることが明らかになった。そして、その痛みセンサーである「受容器」は、哺乳類が保持している痛みの受容器と進化的に近いものであることが分かっている。昆虫は、我々と同様、痛みを検出できる受容器を有しているのである。