誰もが「理論」で虐待を疑われる危険性

 目に入れても痛くない可愛い孫やわが子が、突然の病気で亡くなってしまう。その悲しみの中、もし、自分や家族が「虐待をした犯人」と疑われ、逮捕、起訴され、有罪になったら・・・。

 想像するのも辛いことですが、「虐待許すまじ」の風潮が強い今の日本では、証拠がなくても、「SBS理論」を根拠にした医師の鑑定によって「乳幼児揺さぶられ症候群」と診断され、一緒にいた保護者が無実の罪に問われる可能性があります。

厚労省はDVDやYouYubeで乳幼児揺さぶられ症候群の危険性を啓蒙している(厚労省HPより)

 私のもとには、「つかまり立ちから倒れて脳出血が起こってしまったが、虐待を疑われている」「お昼寝中に突然具合が悪くなり脳出血が見つかったのだが、揺さぶっただろうと言われた」といった保護者たちから切実なメールが届いています。そして、今も複数のSBS裁判が進行しており、長期間にわたって児童相談所にお子さんを保護されているという家族も多数おられます。

 来年2月6日、大阪高裁で判決予定のSBS事件も、山内事件と同じく検察側証人はM医師です。

 虐待が絶対に許されないのは当然のことです。しかし、冤罪も生んではなりません。理論や文献だけをベースに、机上で事実認定を行うことは危険だといえるでしょう。

 無罪を勝ち取ったとはいえ、逮捕時に実名で大々的に報じられ、1年3カ月にも及ぶ拘置所生活を強いられた山内さんの名誉と家族との時間を完全に回復することはできないのです。