(ジャーナリスト・宮下 洋一)
バルセロナ市内が黒煙を上げ、燃えていた。
スペイン北東部カタルーニャ自治州の独立運動を巡り、同州の政治家ら9人に対し、最高裁は10月14日、懲役9〜13年の有罪判決を下した。州都バルセロナでは、独立賛成派市民がその日から連日、大規模デモを繰り広げ、町中では暴動が繰り広げられた。
燃えるバルセロナ
10月16日夜、私は、燃え上がる炎に向かって歩いていた。そこは、市内を横切るグランビア通りと、高級ブティックや五つ星ホテルが連なる目抜き通り、パセッジ・ダ・グラシアが交差する町のど真ん中だ。
風邪を引いてもマスクをつける習慣のない若者たちが、口元を黒マスクで覆って歩いている。黒煙が次第に迫ってくる。通りを封鎖し、周辺にあるゴミの大型コンテナー2台に数人の男たちが火をつけていたのだ。屯して観察する男女は、時々、「政治犯を釈放せよ」と声を荒げていた。
上空からは、警察のヘリコプターが炎の場所を確認しながら近づいてくる。集まる若者たちは上を見ながら野次を飛ばし、それを傍観する警察も挑発を止めない。ゆっくりと高度を下げてくるが、グランビア通りの車線沿いには大きなプラタナスが茂っている。それでもギリギリの高さを保ち、旋回している時だった。カタルーニャの独立国旗を肩にかけた青年が、ヘリコプターをめがけて花火を放ち、ランディングスキッド付近でパーンとピンク色の火を噴いた。