厚切りジェイソン

「Why Japanese people!?」の決め台詞とともに、日本のおかしな文化をぶった切るネタで一躍ブレイクした厚切りジェイソンさん。意外と知られていませんが、本業はIT企業の役員です。今回は、“IT企業の役員”と“お笑い芸人”の両立という自由な働き方を実践する厚切りジェイソンさんに、日本人の働き方に関する「WHY」な事柄をお聞きしました。

「帰りたいけど帰れない」は、言い訳に過ぎない?

厚切りジェイソン厚切りジェイソン(あつぎり・じぇいそん)
1986年生まれ。2014年、お笑い芸人としてデビュー。2015、2016年の「R-1ぐらんぷり」ファイナリスト。お笑い芸人としての活動と並行してIT企業で役員を務める。主な著書に『日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy』(ぴあ)など。

―日本人の「働き方の問題」を考える上で、海外の事例は参考になるかと思います。厚切りジェイソンさんから見て、日本人とアメリカ人の「働き方」には、どのような違いがあると思いますか?

厚切りジェイソン ワークライフバランスの捉え方ってことだよね? それは、国籍は関係なく、人それぞれ違った考え方をしているわけだから、アメリカ人だから「○○な働き方をしている」とか「日本人だから○○な働き方ができていない」という話ではないと思うよ。例えば、物凄い出世欲のある人なら、長い時間働くことを選ぶかもしれない。家族を大事にしたい人であれば、定時になれば帰る。それだけのこと。その違いに国籍は関係ないよね?

―なるほど……。

厚切りジェイソン 何かひとつ日本とアメリカの違いを挙げるとすれば、日本では「会社に居ること=働いている」といった考え方が労働者の中に浸透しているけど、その点、アメリカの労働者はもう少し柔軟な働き方をしている人が多いかもね。僕の父親だって、わざわざ会社に居続けないで家に帰ってきて家族と食事をする。その後、家の中で残りの仕事をするってこともあったしね。

―「日本の労働者は家族と過ごす時間が少ない」といった話をよく聞きますが、これは、日本とアメリカの文化の違いから来るものなのでしょうか?

厚切りジェイソン んん……。誰にも当てはまる話ですが、家族と過ごす時間が欲しければ、その時間を大事にできる環境を自分で選べば良いのではないでしょうか。そうしない日本人が多いからと言って、僕が指摘することでもないかと。その人の人生だから。各人が自分にとって大切なことは何かを選んで、行動したらいいんじゃないかな。僕は家族といる時間を大切にしたいから、そういった働き方を選んでいるだけのこと。

―「ブラック企業問題」などの文脈などで語られる「帰りたいけど、帰れない」といった状況に置かれている人は、どうすべきでしょうか?

厚切りジェイソン

厚切りジェイソン 我慢すること自体が良くないと僕は思うね。嫌だったら、仕事を変えればいいわけだから。僕からすると、なんだか全部言い訳に聞こえてしまうんですよね。本当に家族のために早く帰りたいのであれば、「なぜ、もっと早く帰えれるような働き方に変えようと努力しないんだろう?」って思ってしまうんです。それは、「痩せたい!」と言いつつ食べ続けている人と同じで、心の底から現状を変えたいと思ってないからじゃないかな。人にとって、何も変えないことが一番快適な状態ですから。

「働き方は、その国の文化や勤めている企業のルールに左右される」といった意見をよく耳にするけど…最初からそれを言い訳にしてないで、まずは、自分で考えて状況を変えるために“行動”してみないと。「我慢し続けていれば状況が変わるのですか?」と聞きたいですね。本当にすべて自己責任なんですよ。

―なるほど……何事も自己責任。そう考えると、日本人だからとか、アメリカ人だからとかは関係ないですね。

厚切りジェイソン 本当にそうなんですよ!理想的な働き方をできている人は日本にだってたくさんいますし、一方でアメリカにだって我慢しながら働き続けている人がたくさんいる。だいたい世界はどこも同じなんですよ。

理想的な働き方を実現できている人と、それができていない人の差は、自分で考えて“行動”できたか、“行動”できていないか。それだけ。

だいたい僕が話すと、「アメリカ人だから○○」とか「日本人だから○○」みたいな話に変換されちゃうんだけど、本当は生まれた国の文化なんか関係なくて、その人がどう考えて行動するかなんだよね……。

でも、あなたも今日はそういう話を引き出そうと思って取材に来たんでしょ?(笑)

―うぅ……おっしゃる通りです。失礼しました……。

厚切りジェイソン 本当に何でもかんでも、国や文化の違いのせいにしてほしくないね(笑)。ただし、その国の雇用法が労働者の仕事の質を左右する部分はあるかもしれないね。例えば、日本は法律で働く人が守られすぎている部分があるように感じています。それは、仕事ができる人にとってはマイナスで、できない人にとってはプラスに働くんですよ。仕事ができない人の待遇ができる人と同じなら、できる人の頑張ろうとする意欲はそぎ落とされちゃうよね。過去に別の取材でも話したことがあるんだけど、そういう意味では、日本はできない人が働きやすい国と言えるかもしれないね。できる人は、アメリカに行った方がお金はもらえると思うし。