今後、似たような犯行が次々に起こるリスクを、世界中が覚悟しておかねばならないだろう。

2020年東京五輪の警備は万全なのか

 例えば、日本の安倍晋三政権を嫌悪する「個人」もしくは「グループ」がいたとする。その個人もしくはグループは、日本人であっても外国人であっても構わない。

 その個人もしくはグループが、どこかから「ドローン爆弾」を飛ばして、東京永田町の首相官邸を狙ったらどうなるだろうか? もしくは、今回のように18機も同時に飛ばしたなら、東京の主要拠点は軒並み狙えてしまう。しかも、犯人はA国だかB国だかC氏だか、分からないのだ。

 そんな事態が起こったら、日本がアメリカから買った高価な防衛ミサイル「PAC3」など無力だ。秋田と山口に配備する、しないと言って揉めている3000億円もの「イージス・アショア」も同様だ。

 つまり、世界の安全保障は、これまでとはまったく異なるステージに入ったのである。今後、AI(人工知能)が発達していけば、「ドローン爆弾」は、ますますスピードと飛距離、そして精度を増すだろうから、ほとんど防御不能になっていく。

 極言すれば、「悪意のある個人」が、日本の中枢に壊滅的打撃を与えることができる時代の到来である。かつ、その悪者は逮捕されないかもしれないので、その気になれば何度だって犯行を重ねられる。差し当たっては、来年夏の東京五輪の警備を、根本から変えねばならなくなるかもしれない。

 この事件で私が思った二つ目は、中東の混乱は今後、ますます混迷の度合いを深めていくだろうということだ。そしてそれによって、日本は間接的に苦境に陥るかもしれないということだ。

 サウジアラビアのムハンマド皇太子は、「中東の金正恩」というニックネームまで頂戴しているコワモテの指導者だ。昨年10月、ジャーナリストのカショギ氏を、トルコのサウジアラビア領事館で切り刻んでしまうよう命じた容疑もかかっている。

 そんなムハンマド皇太子は、今後「報復」として、やはり「殺人ドローン」をイランに飛ばすよう軍に命じるかもしれない。そして、どこかのグループに犯行声明を出させて、素知らぬ顔を決め込む。

 そんなことが始まったら、中東は「ドローン爆弾」の連鎖となり、全土がシリアのようになってしまうかもしれない。