私がこの事件で注視したのは、果たしてイランの犯行か、そうではないかという部分ではない。それとはまったく異なる二つのことである。
1万5000ドルの兵器が最新鋭パトリオットの防空網をやすやすと突破した事実
第一は、「真犯人」さえ分からない弱小の武器によって、今年年末に日本からバトンタッチされてG20(主要国・地域)の議長国になるような国家を揺るがすことが可能になったという事実である。
CNNを見ていたら、専門家の解説で、1万5000ドルくらいあれば、あの程度のドローン兵器は作れてしまうと言っていた。
2017年5月、就任して4カ月後、トランプ大統領は初の外遊先に、サウジアラビアを選んだ。それは同国が、2カ国間の武器売買契約としては史上最高額の計1100億ドルもの武器を、アメリカに発注してくれたからだ。ムハンマド皇太子とがっちり握手を交わしたトランプ大統領は、「アメリカはサウジアラビアと共にある」と、得意満面で述べた。
これによって、サウジアラビアは88基のパトリオット・ミサイルを配備した。うち52基が最新型だった。
ところが、わずか1万5000ドルの武器が、1100億ドルの備えをする国を、いとも簡単に突き破ってしまったのである。これこそまさに、人類の戦争史に残る「兵器革命」ではないか。しかも、「真犯人」がどこの国の誰かも知れない「匿名性」を保っているので、攻撃する側としては、報復されるリスクも減らせる。