米中間の覇権争の先鋭化に伴い、一帯一路は中国にとってむしろその重要性は増している。中国は、今後、一帯一路を、より戦略的に(デジタル・シルクロード等)、よりグローバルに(アジア、アフリカのみならず、欧州にも)展開していくだろう。その焦点も、ハードからソフトへ、物のコントロールから情報のコントロールへと移行していくはずだ。一帯一路は今や新しい段階に入ったと言えよう。
マレーシアとパキスタン、一帯一路をどう見直したか?
ただ、本稿では、そのような戦略的問題には深く立ち入らず、昨年大きく盛り上がった途上国による一帯一路見直しの動きが、今一体どのような状況にあるかを、マレーシア、パキスタンを例に取って、詳しく見ていきたい。
一帯一路見直しの先頭を切ったのはマレーシアだった。昨年5月、前任のナジブ政権の腐敗体質を批判して総選挙に勝利したマハティールは、首相就任後早々(8月下旬)に中国を訪問し、習近平主席と会談した。
そこでマハティールは、大胆にも中国政府当局者を前に、中国の対外経済進出は、新植民地主義であると言い切るととともに、一帯一路の看板プロジェクト、東岸鉄道プロジェクトとパイプライン・プロジェクトはキャンセルするとした。
帰国後、マハティールは、関係省庁に、東岸鉄道プロジェクトに関し、中国交通建設(CCCC)との再交渉に入るよう指示した。こうして始まった交渉は、遅々として進まなかったが、本年4月15日、マハティールは、突如、CCCCとの間で、東岸鉄道プロジェクトの規模を3分の1削減し、440リンギット(106億8000万ドル)に引き下げることに合意したと発表した。
一見するとマレーシア側が中国側から大きな譲歩を引き出したようだが、これはむしろ、マレーシア側が中国側の主張に歩み寄った結果とする方がより正しい見方と言えよう。