2019年9月3日、秋季中青年幹部養成クラスの開講式で演説する習近平・中国共産党中央総書記(写真:新華社/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国共産党中央総書記の習近平が9月3日に中央党校の秋季中青年幹部養成クラスの開講式で行った15分間の講話の中で、「闘争」という言葉がなんと58回も繰り返されたという。「共産党も、中華人民共和国も、改革開放の実施も、新時代の中国の特色ある社会主義事業もすべて闘争の中で生まれ、闘争の中で発展し、闘争の中で壮大になった」「闘争すべきときに闘争するのだ」「闘争とは芸術であり、闘争に長けねばならない」「矛盾があれば闘争」「あえて闘争」「うまく闘争」・・・闘争のバーゲンセールかと思うような演説だった、らしい。

 中国で「闘争」と言えば、毛沢東の階級闘争理論。習近平の演説自体、毛沢東語録の引用ばかりが並んでいる。建国後、最大の闘争は文化大革命の10年か。習近平は何と闘争しようというのだろうか。とにかく、この習近平の闘争論には、党内人士もびっくりしたらしい。まさか、大衆をあおって、文革式階級闘争でもやらかすつもりか、と。

まるで習近平の共産党員総動員令

 その講話の中身をもう少し見てみよう。

 講話のタイトルは「闘争精神を発揚し、闘争の本領を増強せよ、“2つの100年”奮闘目標を実現するために、頑強に奮闘せよ」という。2つの100年というのは建党100年目の2021年と建国100年の2049年をさし、この年を節目に中国が掲げる目標、「小康社会を実現する」とか「米国と肩を並べる大国になる」とか、偉大なる中華民族の復興、中国の夢を実現しようというのが中国の長期戦略である。

 講話では、社会主義国家の誕生が奮闘の苦しみの中から誕生しており、今、これまで100年なかった未曾有の大変局を迎えて、我々党指導部の偉大なる闘争は得難いチャンスに直面している、と指摘。共産党人の闘争には方向性、立場、原則があるとして、次の5つの「凡(すべて)」を闘争の対象として挙げた。

(1)中国共産党指導とわが国の社会主義制度を損なう種々のリスクの挑戦、(2)我が国の主権、安全、発展理系を損なう各種リスクの挑戦、(3)我が国の核心利益と重大原則を損なう各種リスクの挑戦、(4)我が国人民の根本利益を損なう各種リスクの挑戦、(5)我が国が“2つの100年”奮闘目標を実現し、中華民族の偉大なる復興を損なう各種リスクの挑戦。

 さらに、
「共産党の指導と、わが国の社会主義制度は揺るがしてはならない」
「我々は断固闘争し、闘争すれば必ず勝利する」
「重大な闘争の試練の前に、“不畏浮雲遮望眼”“乱雲飛渡仍従容”(目の前を遮る雲を恐れず、乱雲を飛び超えることは容易である)」
「直面する重大闘争は少なくない。経済、政治、文化、社会、生態文明建設、国防、軍地建設、香港・マカオ・台湾工作、外交、党の建設・・・などの面にすべてあり、ますます複雑化している」
「闘争は芸術であり、闘争にたけねばならない」
「指導幹部は国土を守る責任があり、国土を守る責任を尽くさねばならず、招集がかかればすぐ駆けつけて、戦い、戦えば必ず勝つ(召之即来、来之能戦、戦之必勝)」
・・・と全編こういう調子で、毛沢東詩や軍隊用語を交えて、幹部候補生たちに闘争の重要性を訴えた。