さて、ここ数年の「働き方改革」に伴う動きで、私は以前から疑問に思っていることがあります。それは、「その働き方改革は、本当に会社の利益が担保されるのでしょうか」ということです。
知人が冗談で「働き方改革で儲かるのは、働き方改革セミナーをしている人達だけじゃないの?」と言っていましたが、今のままでは当たらずとも遠からずという気もしています。
「残業時間を減らしましょう」「自分らしいワークライフバランスを目指しましょう」、それは素晴らしいことなのですが、では、それらを実行して尚、会社の利益が維持、向上するためにはどうしたらいいのだろうかという「経営者が一番知りたい部分」については、「それは会社の自助努力で」と濁してしまうものが多いような気がしています。確かに、会社の数字を勘案した上で社員に業務指導をしてきたという経験がないと、その部分を伝えるのは難しいかもしれません。
会社の数字と労務は表裏一体です。現実問題として、内部留保や人員に余裕のある一部の大企業以外のほとんどの会社は、今回の働き方改革の場合、改革と同時に事業モデルそのものやワークフローなどさまざまな要素も同時に見直し、そして修正をしていかなければ、多くの会社は徐々に利益が下がっていきます。ベンチャー企業や零細企業のような、人員や内部留保にも余裕のない会社であればなおさらこのことは死活問題です。会社が倒産してしまうことが労働者にとって一番の不利益になるという「当たり前の事実」を無視して、気持ちのいい言葉だけを並べて「働き方改革」を済ませてしまうことは、数字の難しさを知っている分、私にはできないのです。