「利益が出る働き方改革」を総務人事部門が発信すべき

 さて、ここ数年の「働き方改革」に伴う動きで、私は以前から疑問に思っていることがあります。それは、「その働き方改革は、本当に会社の利益が担保されるのでしょうか」ということです。

 知人が冗談で「働き方改革で儲かるのは、働き方改革セミナーをしている人達だけじゃないの?」と言っていましたが、今のままでは当たらずとも遠からずという気もしています。

「残業時間を減らしましょう」「自分らしいワークライフバランスを目指しましょう」、それは素晴らしいことなのですが、では、それらを実行して尚、会社の利益が維持、向上するためにはどうしたらいいのだろうかという「経営者が一番知りたい部分」については、「それは会社の自助努力で」と濁してしまうものが多いような気がしています。確かに、会社の数字を勘案した上で社員に業務指導をしてきたという経験がないと、その部分を伝えるのは難しいかもしれません。

 会社の数字と労務は表裏一体です。現実問題として、内部留保や人員に余裕のある一部の大企業以外のほとんどの会社は、今回の働き方改革の場合、改革と同時に事業モデルそのものやワークフローなどさまざまな要素も同時に見直し、そして修正をしていかなければ、多くの会社は徐々に利益が下がっていきます。ベンチャー企業や零細企業のような、人員や内部留保にも余裕のない会社であればなおさらこのことは死活問題です。会社が倒産してしまうことが労働者にとって一番の不利益になるという「当たり前の事実」を無視して、気持ちのいい言葉だけを並べて「働き方改革」を済ませてしまうことは、数字の難しさを知っている分、私にはできないのです。

 私は経理からキャリアをスタートしていますので、総務人事の業務を途中から並行して行い始めた時も違和感なく進められましたが、反対に総務人事のキャリアからスタートした方が経理のスキルを後から積むというのは、簿記の知識も必要となりますので少し難しいと思います。ただこれからの時代、「利益が出る働き方改革」を総務人事部門の方達が経営者や社員に提唱していくということが、企業活動の最重要項目の一つになっていくだろうと私は考えています。総務人事部門の「レベル」「層の厚さ」で会社の浮沈が決まってくるのではないかと思います。


 

 そこで今回の連載では、「経理のプロ」の視点から、「働き方改革」や「総務人事」という仕事をフォーカスし、「利益の出る働き方改革」を行う際のポイントなどをお伝えできればと思っています。次回以降、どうぞよろしくお願いいたします。