竹島で軍事訓練を行う韓国海軍(提供:South Korea's Navy/AP/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 韓国で海軍大増強計画がスタートした。当然ながら韓国は自国の国防方針に基づいて海軍力の強化を推し進めるのであって、日本がとやかく言う筋合いの問題ではない。

 とはいえ、文在寅政権による対北朝鮮融和姿勢、韓国海軍によるレーダー照射事件、それに韓国によるGSOMIA破棄などの諸状況を鑑みると、韓国海軍が手にしようとしている軍艦の中には、日本を仮想敵国と意識しているのではないかと勘ぐらざるを得ないようなものが含まれている。日本側としてはそれらの建造計画には関心を示すのは無理からぬところと言えよう。

プライドのための航空母艦建造か

 韓国海軍増強計画で建造が予定されている軍艦の中で一般的に注目されているのは、航空母艦である。航空母艦といっても、海上自衛隊の「いずも型」ヘリコプター空母より若干大型の30000トン級空母が建造されることになっている。

 韓国軍は、現時点ではSTOVL戦闘機をはじめとする艦載固定翼機を保有していないし、国産戦闘機(KFX)開発計画にもSTOVL機は含まれていないようである。

 しかし、ヘリコプター空母として建造した「いずも」や「かが」を、艦載固定翼戦闘機を運用するために大金と時間をかけて改装するといった、日本の軍事的失敗と税金の無駄使いをしている状況を目の当たりにしている韓国は、当初よりヘリコプター空母ではなく、STOVL戦闘機の運用を前提とする航空母艦として設計し建造を進めるものと思われる。

 韓国海軍が航空母艦を保有する表だった理由は次のようなものだ。

「北朝鮮沖合の洋上から戦闘機を発進させることができるようになれば、北朝鮮へ接近する韓国軍航空戦力のベクトルが増加する。そのうえ、北朝鮮軍の対艦攻撃能力はいまだに弱体であるため、航空母艦は有用な対北朝鮮側面攻撃用アセットとなる・・・」