医学専門大学に入学したAさんは、これまで2度も落第するなど、学業成績は最下位圏にある。しかし、不思議にも6回も奨学金を授与されている。Aさんに個人的に奨学金を授与していた指導教授は、韓国メディアとのインタビューで、「落第後に勉強を放棄しようとしていたので、彼女を励ますために(奨学金を)与えた」と述べた。そして、偶然にもこの指導教授は、2019年、釜山市が運営する釜山医療院の院長として赴任することになった。
22日の「韓国経済新聞」は、「釜山大学医学専門大学院がチョ・グク氏の娘・Aさんが落第の危機に直面した際、落第対象になっていた生徒全員を集団救済したことがある、との内部告発があった」と報じた。この内部告発者は、「当時はチョ・グク氏が民情首席として強大な権力を握った後だったので、教授の間ではそういった措置は“チョ・グクの娘を救うため”という言葉が出ていた」と述べたという。
超格差社会・韓国では入試の不正は怒りの種
記憶に新しい朴槿恵(パク・グネ)前大統領の弾劾事件は、チョン・ユラ氏の入試不正事件がひとつの端緒となった。朴前大統領の友人の崔順実(チェ・スンシル)氏の娘チョン・ユラ氏が、梨花女子大学入学の過程で不正な特権を受けたという疑惑によって、弾劾の引き金となった「ろうそくデモ」が全国民に広がった。朴大統領の弾劾後、チョン・ユラ氏は外国で逮捕されて韓国に引き渡され、裁判を受けた。実刑判決こそ受けなかったが、大学入学と高校卒業の資格は取り消された。ちなみに梨花女子大学の関係者5人は実刑を言い渡されている。
チョン・ユラ氏事件について辛辣な批判を展開して注目を集めたチョ・グク氏だったが、娘の不正入学疑惑には、「国民情緒と多少の乖離があるのは認めるが、法的には問題がない」と開き直っている。与党の「共に民主党」と文政権の関係者も「マスコミがフェイクニュースを用いて政権を揺さぶっている」と主張し、「チョ・グク死守」の立場を堅持している。
しかし、他のことならともかく、入試問題にだけは「不正」や「疑惑」が許せない韓国国民の怒りはとどまることを知らない。超格差社会の韓国社会では教育だけが、「身分上昇」の唯一の手段だからだ。特に「公正」を最も重要な価値として重んじている若者たちの失望や怒りは生半可なものではない。
23日の午後から、チョ・グク氏の母校のソウル大学やチョ氏の娘の母校の高麗大学では、それぞれ数百人の学生が集まって「チョ・グクout」を叫ぶろうそくデモが行われた。論文疑惑に関わった檀国大学でも、該当教授の辞職を求める集会が行われるなど、若者たちの怒りが大学街へと急速に広まっている。ろうそくデモをきっかけに誕生した「ろうそく政権」が、今度は自らがその「ろうそく」の審判に晒される羽目になった。今や文政権の命運は「風前の灯」なのかも知れない。