チョ・グク氏をめぐる疑惑は、韓国メディアが「疑惑の山」と呼ぶほど巨大で複雑だ。

 まず、チョ氏の家族が営む学園財団の理事長だった父親が死んだ際、相続の過程で、負債は返済せず、財産だけ相続しようとして、家族間で「偽装訴訟」を起こすという奇抜な債務逃れの手法を使ったという疑いだ。結局、チョ氏と弟は、相続した財産内で借金を返すという「相続限定承認」という手法を使い、父親が残した42億ウォンの債務に対し、相続した全資産21ウォン(!)だけを返済した。その上でチョ氏の弟は、自身が経営する建設会社が学園から工事費を受け取っていないとして学園を訴えた。この訴訟で学園側はまったく反論せず、敗訴。チョ氏の弟の会社は、51億ウォンの債権を受け取れることになった。これらが全て、巨額の遺産を相続できるようにするための偽装工作ではないのか、という疑惑が浮上しているのだ。

 さらにこの過程で、弟夫婦は実際には同居し続けているにも関わらず、財産を守るための「偽装離婚」をしたという疑惑も報道された。

 また、高級公職者財産申告書には、全財産が56億ウォンのチョ氏だが、民情首席になってから2カ月後には74億ウォンのヘッジファンド投資を約定し、現在まで10億ウォンを投資。チョ氏はこの投資を通じて政府の公共工事を受注する中小企業の筆頭株主になり、その企業はわずか1年で売上高75%増の急成長を見せたという疑惑も持たれている。

 さらには、妻の財産を隠すために妻名義の不動産を、離婚した弟の妻の名義に変える「偽装売買」をしたという疑惑もメディアの取材で続々と明るみになった。

二週間のインターンで論文の筆頭著者に

 それらの中でも、韓国人をもっとも憤らせた疑惑は、チョ氏の娘の不正入学疑惑だ。チョ氏の娘のAさんは外国語専門高校を卒業した2010年に、「韓国の早稲田」と呼ばれる高麗大学の理工系学科に入学した。つづいて2015年には釜山大学医学専門大学院に入学、現在4年生に在学中だ。医学専門大学院とは、6年コースの医科大学の課程を4年に学ぶ専門大学院で、大学卒業者たちに入学資格が与えられる。

 ところがチョ・グク氏の法務部長官に内定をきっかけに、医学専門大学院までとんとん拍子で進学してきたAさんのこれまでの入学過程において「不正」が働いていたのでは、という疑惑が浮上してきたのだ。

 8月20日の「東亜日報」は、「チョ氏の娘のA氏が高校在学中だった2008年、大韓病理学会に提出された英語論文に『筆頭著者』として名前を登録した事実が確認された」という記事をスクープした。当時、外国語高校の2年生に在学中だったAさんは、檀国大学医学部医科学研究所で2週間ほどインターンを経験していたが、このとき檀国大学医学部教授のB氏が中心になって行っていた実験に参加した。その後、B教授が責任著者になって作成された研究論文が、2008年12月に大韓病理学会へ提出されて学会誌に掲載されている。

 ところが、この論文に「筆頭著者」として記載されているのがAさんの名前とされ、Aさんはこの「スペック」(入試のための資格や経歴)を用いて高麗大学に無試験で入学したというのだ。高校2年生のインターンが、医学博士たちで構成された研究陣が6年以上も準備してきた研究にたった2週間参加しただけで、他の研究員たちをゴボウ抜きして実験や論文の主導者として認められる「筆頭著者」に名前が挙げられるような不自然な事態に、疑惑の目が向けられているのだ。

 これについて、論文の責任著者のB教授は、東亜日報のインタビューで「Aがチョ氏の娘とは知らなかった。海外大学へ留学すると言われて善意でやったことだ」と弁明した。しかし、その後、B教授の息子とAさんが同じ高校の同級生だったことや、チョ氏の妻とB教授の妻との間に親交があるという事実が明らかになり、不正疑惑に一気に火がついた。しかも、B教授の息子が高校在学中にチョ・グク氏が教授を務めていたソウル大学のロースクールでインターンシップを行っていたことも明らかになり、「交換スペック」との憶測も呼んでいる。

 さらに21日の「朝鮮日報」は、Aさんが高校3年生の時に、公州大学の生命工学科のインターンシップに3週間参加し、日本で開かれた国際鳥類学会で発表された論文に「第三著者」として名前が載れている事実を暴露した。当時の指導教授のC教授は、Aさんの母親(チョ・グク氏の妻)と大学の同級生で、インターンシップ面接にも母親が同行したと明らかにした。

 また、Aさんが、高校在学中に、高校生には応募資格を与えない国連のインターンシップに参加したことを始め、一般の高校生には到底不可能な各種のスペックを重ねてきたという疑惑も次々と浮上。結局、彼女は、親の地位を利用して不正にスペックを積み上げ、高麗大学の環境生態工学部に無試験で入学し、卒業後は、これまたこのスペックを利用して筆記試験で振るわなかったにもかかわらず、釜山大学医学専門大学院に無事入学するようになった、というのが韓国メディアの指摘だ。