『海上保安庁レポート2007』によれば、拿捕された日本漁船は計326隻、抑留された乗組員は計3904人に上った。海上保安庁巡視船への銃撃も15件、16隻に及んでいる。『海上保安白書 昭和四十一年版』では8人が死亡したとされている。
このような「野蛮な人質外交」が最も効果を上げたのが、「一九五七年十二月三十一日の合意」であった。
この合意では、日韓交渉の最大の対立点だった、約22億ドルに上る、韓国に残してきた日本の財産に対する請求権を日本は放棄した。それと引き換えに、ようやく韓国は抑留漁船員の送還に合意した。
また日本は、被害総額250億円以上と見積もられた、日本漁民が受けた直接間接の損害賠償についての韓国側に対する請求権も放棄した。賠償金はすべて、日本政府が支払うことになった(藤井、同上書、29~33頁)。
そのうえ、1965年に締結された日韓基本条約中の「(日本と)韓国との請求権・経済協力協定」では、日本は韓国の要求を最終的に受け入れ、無償資金3億ドルと長期の低利貸し付け2億ドル、総額5憶ドルの提供を約束した。その額は当時の韓国の国家予算の1.4倍だった。
このようにして、李承晩政権以来の「野蛮な人質外交」による恫喝を交えた、韓国側の国際法無視の強硬姿勢に、日本側は屈した結果となった。
しかし現在では、国際法上「征服」の領域権原性は認められておらず、竹島の領有権が日本に帰属することは明らかである。
今年7月の中露両軍機の竹島接近・領空侵犯事案は、韓国が主張する実効支配が現実の中露の軍事的威圧の前には、効力をもたないことを露呈させた。
反日姿勢を強め自ら孤立を深める韓国
このように韓国の「野蛮な人実外交」に日本が屈した別の大きな理由として、冷戦のさなかにあり、米国側から共産主義国の脅威を封じ込めるためには日米韓の安全保障上の連携が重要であるとの要請があったことが挙げられる。
また日本としても、北朝鮮の独裁政権に対して韓国の安全保障と経済発展を支えることが、日本の国益にとっても死活的に重要との判断があったとみられる。
李栄薫(イ・ヨンフン)ソウル大学名誉教授らが指摘する「反日種族主義」を強める文在寅政権は、今年8月4日の『中央日報』によれば、匿名の軍・政府当局者の話として、竹島近海で、近く8月中にも韓国軍による軍事演習を行う可能性が報じられており、竹島実効支配強化の姿勢を示している。