オフィス用品通販のアスクルの岩田彰一郎社長の取締役解任を、同社の筆頭株主であるヤフーが求めている騒動が泥沼化しているが、騒動の背後にソフトバンクグループ(SBG)の孫正義社長の意向があることを示す内部資料が存在することが分かった。
取材班はこのほどこの資料を入手した。
この騒動をめぐってはアスクルの独立役員(利益相反のない社外取締役あるいは社外監査役)がヤフーを痛烈に批判するという極めて異例の記者会見が開かれるなど、ヤフーだけでなくSBG全体のレピュテーションリスクが顕在化している。この内部資料の中身に触れるまえに、まずはこの騒動の経緯とポイントを整理しておく。
世界規模のレピュテーションリスク
今回の騒動は8月2日に予定されているアスクルの株主総会で、アスクルが提出する「取締役の選任」において、発行済み株式の約45%を握っているヤフーと約12%を保有するプラスが岩田社長の再任に反対する意向を表明したことでSBG内の内紛が表面化した。
この発表にアスクル側は岩田社長らが会見を開くなど激しく反発している。
特に7月23日に会見を開いたアスクルの独立役員が憂慮するのは、人事・報酬諮問委員会やヤフーから派遣されている役員も含む取締役会の承認を受けるなど、正当な手続きを踏んで提起された人事案が、大株主の一存で覆されること。こうしたガバナンスの問題に加え、かねてより日本市場で懸念されていた親子上場によって生じる利益相反の問題が指摘されている。
ヤフーの目的は、将来性の高いアスクルの個人向け通販事業「ロハコ」にあるとみられている。ヤフーがロハコを手に入れればヤフーの成長性は高まるが、逆に有望事業を手放すアスクルにとってはメリットに乏しく、「少数株主の利益が損なわれかねない」とアスクルの独立役員は主張しているのである。