インドネシア政府対テロ庁は関係者をシリア、イラクに派遣し、帰還を希望するインドネシア人の元ISメンバーからの事情聴取を始めた。「希望すれば誰もがインドネシアに帰還できるというものではなく、ISの教義などを棄てることなどの条件を満たすことが条件になる」との考えを示し、帰還が無条件でないことを明らかにしている。

 しかしその一方でこれまでにISに参加してすでに帰国している元IS関係者、シリア渡航を断念してインドネシアに留まっているISシンパ、さらにフィリピンやマレーシアなど近隣国でIS関連組織に所属して帰還したIS支援組織のメンバーなどがインドネシア国内にかなりの数存在している。

 こうした人物に関しては国家情報庁(BIN)や国家警察対テロ特殊部隊(デンスス88)などが情報収集するとともに警戒対象として監視活動を続けているとされる。

 そうした状況の中で新たに約100人のインドネシア人IS関係者の帰還を進めることは、治安機関、諜報機関にとって新たな負担を強いられることになるのは確実で、これが治安組織に残る根強い反対論の根拠となっている。

国内テロ対策急務の中での帰還容認

 インドネシア国内ではかつて国際テロ組織「アルカイーダ」と関連があったイスラム教テロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」の残党によるテロ活動に加えて、ISと関連がある、あるいはISに忠誠を誓ったテロ組織として「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」「ジェマ・アンシャルット・タヒド(JAT)」「ジェマ・アンシャルット・シャリア(JAS)」「ヌガラ・イスラム・インドネシア(NII)」「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」などが存在し、その規模の大小はあれ活動を継続していると治安当局はみている。

 インドネシアでのテロは13人が死亡した2018年5月13日の東ジャワ州スラバヤ市内にある複数のキリスト教教会、警察署を狙った連続自爆テロを最後に大きな犠牲を伴うテロ事件は起きていない。

インドネシア警察署襲撃、ISが犯行主張 「殉教作戦を遂行」

昨年5月、自爆攻撃が起きたインドネシア・スラバヤの警察本部周辺で警備に当たる警官(2018年5月14日撮影)。(c)AFP PHOTO / JUNI KRISWANTO 〔AFPBB News