韓国が取り得る有効な「報復措置」はない

 韓国の経済担当副総理や、外交部長官などからは日本に対抗する措置を講じると示唆している。しかし、何か有効な措置があれば既に示され、日本をけん制しているであろう。韓国製半導体の日本への輸出を止めるとしても、韓国製半導体の輸出先の8割は中国であり、日本向けは1割にしか過ぎない。しかもその輸入代替先として台湾なども考えられる状況だし、仮に導入しても日本が受けるダメージは、韓国が受ける影響とくらべれば、格段に軽いであろう。

 一方、韓国国内ではすでに日本製品ボイコット運動が始まっているようで、反日的行動に力を入れる人々も一部にいる。しかし、多くの韓国国民は、すでに日本製品に親しんでおり、迷惑に感じる人が多いであろう。先日、韓国の人気俳優が日本を旅行したことをSNSで公開しただけで「軽率な行動だ」と批判が集中した。このように一部では「日本旅行自粛ムード」が出ているが、これまで日本は韓国の若者にとって人気の旅行先だった。一般の国民にどれだけ浸透するかは不透明だ。

 韓国政府は財閥を政府に従わせるため、税務調査をすることが多いが、今回も日本企業に対してこのような措置が取られるかも知れない。しかし韓国に進出している日本企業は、すでに賃金の大幅な引き上げ、電力料金の引き上げなどで韓国への投資に魅力を感じなくなっており、仮に韓国政府がこのような行動に出れば、韓国への投資に一層消極的になるのがオチだろう。

泥沼化する日韓対立

 日韓の対立は「泥沼化」の様相を呈している。まず日本の措置は正当な仕組みで導入したものであり、韓国が適正な対応に出ない限り撤回する必要はない。だが、韓国は日本が譲歩するのに慣れっこになっている。なにより、文在寅政権は、これまで日韓の問題ではレーダー照射問題、徴用工問題いずれの問題でも、自らの非を認めることはなく、日本批判を繰り返してきている。今回もおそらくこうした対応は変わらないであろう。

 そうなれば日韓対立は「落としどころ無き対立」になってしまう。それでもおそらく文在寅大統領は、自分の支持者を失うリスクを冒してまで自己の行動規範を転換して、日本の要請に応えることはないだろう。

 もしも文氏が変わるとすれば、それは韓国経済がIMF通貨危機になったときのような、「まともな対応をしない限り政権の崩壊を招きかねない」といった深刻な状況に陥った時か、または、韓国の国民が文政権の無策、無能、無責任に気付き、文政権非難の声が広く沸き上がった時くらいだろう。前者のような状況は誰も望むものではない。