もともと、文大統領は日本がいかなる措置をとろうと歴史問題などの対応を変えてくる人のようには思われない。これまでの文大統領の行動パターンは、自分がやりたくないことは回避するというものであった。それが韓国の外交無策となり、各国の信頼を失わせてきている。したがって、韓国経済が大打撃を受け、日本との関係改善なくしてはどうしようもなくなるまで一切動かない可能性が高い。
もちろん韓国には良識のある人が多くいる。「日韓関係の修復を図るべき」という意見が進歩派の元老の中からも多く聞こえるようになってきた。しかし、トランプ大統領と金正恩委員長の「歴史的会談」に酔いしれ、国民感情が盛り上がっている時に、韓国国民が日本の怒りにどこまで共感するだろうか。少なくとも短期的にはむしろ反発する向きが多いだろう。
韓国の対抗策はあるのか
そうした状況で、韓国政府は今後どのように出てくるか。日本に対し貿易、金融面で効果的な対抗措置で何があるのか。私には、日本を脅かすような措置を直ちには思いつかない。
実は今回、韓国大統領府は率先して事態解決に当たろうという姿勢はまだ見せていない。朝鮮日報によれば、日本が輸出規制を発表した当日、大統領府は公式コメントを発表しなかったが、青瓦台の関係者は「産業通商資源部など関係部処が対応するだろう」と語ったという。徴用工判決の際にも大統領府は、「司法の決定なので政府はどうしようもない」とコメントし、事実上日韓関係の悪化を放置してきた。今回も積極的に動こうとしない大統領府に対して、「都合の悪い事態になると、関係省庁に尻拭いを押し付けている」との批判が出ている。
それでも貿易に関し日本に何らかの「報復」をしようとするならば、韓国政府が韓国企業に言うことを聞かせようという時によくやっているように、通関及び決済遅延、税務調査などをしてくる可能性はある。今回もこれをやるかどうかは分からないが、このようなことをすれば日本企業の「脱韓国」の動きに拍車がかかるだろう。ただ、日韓間の泥仕合になる可能性もあり、油断はできない。
すでに韓国政府の最低賃金政策や原発停止に伴う賃金コストの下落、THAAD配備をめぐる中国との葛藤など、韓国への投資の魅力は落ちており、日本が韓国を見限るのは意外と早いかも知れない。今回の日本の措置とこれに対する韓国政府の対応により、日韓経済関係は当面縮小が避けられそうもない。