こうした事態に対し、韓国企業は非常事態に陥った。財界関係者は「在庫物量の確保や供給処の多角化で当面は対応するだろうが、中長期的には影響を受けることは避けられない」とコメントしている。日本経済新聞によれば、韓国の半導体大手SKハイニックスの関係者は、材料の在庫量は1~2カ月分程度で、追加の調達が出来なければ3カ月後には工場の稼働停止もあり得る、と話しているという。

 これらの製品の輸出規制は、日本では以前から取り沙汰されてきたので、韓国のトップ企業では当然こうした事態に備えてきたはずである。しかし、当座はしのげても、この規制が長引けば徐々にその影響が浸透して来るはずだ。韓国企業は、「ファーウェイ制裁よりも大きな制裁がやってきた」「ファーウェイ制裁の10倍と言われる衝撃がやってきた」と危機感をあらわにしている。

 韓国の経済は今、半導体で何とか成長し、輸出、企業利益を維持している状況にある。その基幹産業に重大な影響を及ぼす場合、韓国経済全体への負の影響が深刻となる恐れがある。

 逆に日本側にはどのような影響が予想されるのか。

 こうした政府の措置に対し、日本経済新聞は「通商ルールを恣意的に運用していると受け取られる恐れがある」「日韓関係の緊張を高める可能性がある」「中長期的に『脱日本』の動きを招きかねない」と懸念も伝えている。

 また、当面の問題として、韓国の企業を顧客に持つ、これらの3品目を生産する企業、韓国から半導体を輸入する企業にも実害が及ぶことは避けられまい。例えば、韓国製半導体を使用しているアップル社のiPhoneの生産が落ち込めば、アップルに部品供給している日本企業にも影響が出る。事態の成り行きを固唾を呑んで見守っているのは、韓国企業だけではないのだ。

日本は自由貿易に反する行動を取ったのか

 今回の一連の措置をとる理由について経済産業省は「外為法に基づく輸出管理を適切に実施するとの観点から、韓国向けの輸出について厳格な制度の運用を行う」「輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されるが、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況」「韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した可能性もある」と述べ、元徴用工を巡る報復措置とは直接関連付けていない。

日本政府、半導体材料の対韓輸出規制へ 徴用工問題で対抗措置

元徴用工とその親族ら。韓国・ソウルの最高裁判所にて(2018年11月29日撮影、資料写真)。(c)Jung Yeon-je / AFP〔AFPBB News

 ここで、「輸出管理をめぐる不適切な事案」については説明がないが、最近の韓国の北朝鮮への過度な融和姿勢、北朝鮮産石炭のロシアを通じた不正輸入、瀬取りなどに鑑み、北朝鮮との不正取引が行われたことを指すのであろう。今回の措置は韓国に対してのみ関税増額などの不利益を課すものではなく、最近国際情勢や韓国の対応をめぐり、“優遇措置をやめるだけ”とも言え、韓国がWTOに提訴しても日本の立場について十分説明できると考える。

 また、日本との関係では、戦後の日韓関係の基盤を揺るがす行動を取ったこと、レーダー照射問題では日韓の安保協力を否定する行動を取ったことから、日韓の政治レベルでの信頼関係は著しく低下している。したがって、日本の主張は理にかなったものではある。