「サニブラ旋風」が吹き荒れている。陸上・日本選手権(福岡・博多の森陸上競技場)で二冠を狙うフロリダ大2年のサニブラウン・ハキーム。同選手権第2日の男子100メートル決勝では大会新記録となる10秒02で2年ぶり2度目の優勝を果たし、世界選手権(9月27日開幕・ドーハ)の代表にも内定して9秒97の日本記録保持者としての貫禄を示した。ライバルと目されながら2位に終わった前日本記録保持者の桐生祥秀に0秒14の大差をつけての圧勝。スタートのタイミングは全体で2番目に遅い反応だったにもかかわらず、後半から伸びる圧倒的な加速力でレース中盤からトップに躍り出るとそのままゴールテープを切った。
それでも9秒台にとどかなかったことで、やや不満げな表情を見せながら「あと0秒03ですか・・・。もっとスタートがしっかり出来ていれば良かったですね」。常に上を目指そうとする並外れたハートの強さは健在だ。30日に行われる男子200メートル決勝では優勝の大本命に挙げられていることはもちろん、日本人初の20秒切りにも大きな期待がかかる。
「勝ったのは本人の努力ではなくハーフだから」の心なき声
その一方、非常に残念なのは、サニブラウンの活躍に対して心ない指摘がいまだに数多く飛び交う現実だ。ネット上でも「サニブラウンが『日本人初』と騒がれることに違和感を覚える」「結局ハーフが最強だからサニブラウンの活躍は努力云々じゃない」などといった類の書き込みが散見される。ガーナ人の父親と日本人の母親の血を継ぐハーフのサニブラウンは、福岡県北九州市の病院で産声を上げた日本人だ。
だから、言い切らせてもらう。サニブラウンについて同じ日本人として認めないかのごとく乱暴な言葉を向けたり、彼の成功は持って生まれた身体能力のおかげであるから本人の労苦とは無関係としたりするような的外れの意見はかなり大きく間違っている。