今季V奪回を狙うプロ野球・巨人の歯車に少しずつ狂いが生じ始めている。29日の阪神タイガース戦は延長12回の末、4-8でサヨナラ負け。昨年7月16日から続いていた敵地・甲子園での阪神戦連勝(引き分けを挟む)も「9」で止まってしまった。開幕から首位を快走していたはずのチームはここ最近やや失速気味で、5月の成績は29日現在で9勝11敗1分。猛烈な追い上げを見せた広島東洋カープに首位の座を明け渡したばかりか、阪神とも入れ替わりで3位へ転落してしまった。

 29日の試合では代打で打席に立った高山俊外野手に痛恨のグランドスラムを被弾するなどリリーフ陣が崩れた。8回で2点リードとし、逃げ切り体勢を固めていたはずが、その裏に3番手の澤村拓一投手が同点2ランを許してから暗転。「勝利の方程式」が一向に固まらないもどかしさは、チーム内のみならず多くの巨人ファンもヤキモキさせていることだろう。

成果が見えてこない「60億円超」の巨大補強

 ブルペンがギクシャクし始めた発端は新守護神のライアン・クック投手が右肘違和感で登録抹消となったことだ。ストッパーが定まらず代役で何とか凌ごうとするからブルペンの面々はやり繰りによって疲弊し、パンク寸前へと追い込まれてしまう。そのA級戦犯となったクックは現在、ブルペン投球を再開しているもののリハビリ途中で左太もも裏も痛めたこともあり、一軍復帰時期は大幅に遅れてメドすら立っていない。

 昨季はシアトル・マリナーズで昨季19試合2勝1敗、防御率5・29の数字を残した。2016年10月にじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた右ひじの状態について問題ないと判断し、球団側は獲得に踏み切ったものの完全に当てが外れた。1年契約で推定年俸は130万ドル(約1億4300万円)。「大枚をはたいていったい何のために獲得したのか」との疑問はどうしても拭えない。

昨年、シアトル・マリナーズで活躍したライアン・クック(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 そう考えると、そもそも昨オフに「総額60億円超え」とまでウワサされた新戦力の巨大補強とは何だったのか。こうした疑問の声が昨今の巨人でささやかれているのも無理はない。