写真:AP/アフロ

 3月の発売以来、野球ファンの間で、「面白い」と評判になり、売り上げを伸ばしている野球書籍がある。

 その一冊とは、『セイバ―メトリクスの落とし穴』(光文社新書、著者/お股ニキ)。

 著者のお股ニキ氏は、主にツイッター上で活動する野球評論家。既存のメディアには属しておらず、ひとことで言えばコアな野球ファン・・・つまり素人である。

ダルビッシュ有に信頼される「素人」

 ただ、そんな素人が発する、選手のプレー分析や監督の采配に対するコメントが「的確である」と口コミで話題となり、だんだんとフォロワーが増加。また「俺クラスになると〇〇だからな」という独特で、歯切れの良い言い回しもウケて、いまや、2万人を超えるフォロワーを抱える人気アカウントとなっている。

 ちなみに、「お股ニキ」という(少々声に出しづらい)著者名はツイッターのアカウント名に由来。また、ツイッター上で同書は「お股本」と呼ばれている。

 現在は、お股クラスタと呼ばれるファンが誕生するほど支持を集めているが、その存在が、ツイッター上の野球ファンの間で本格的に広く知られるようになったのは、4年前のある出来事がきっかけだった。

 シカゴ・カブスのダルビッシュ有について呟いたところ、なんと本人からリプライが送られてきたのである。その時に、どのような絡みがあったのか・・・その内容は、本書を読んで確認していただきたいが、2人のやり取りはこの場限りでは収まらず、交流は続き、最終的にはお股ニキ氏がダルビッシュに変化球についてアドバイスを送るほどの中にまで発展した。

 お股ニキ氏は、当時の心境を次のように振り返る。

「最初はやっぱり、とても緊張しましたよ。(交流することに)今は少し慣れてきましたけど、普通に考えたらあり得ないことですから(笑)。SNS上で選手がファンと交流したケースは、日本はもちろんMLBでもなかったのではないでしょうか。ダルビッシュ投手だからこそ、起こりえた出来事。自分が『こうしたらいいのでは』と伝えたボールを、ダルビッシュ投手が実際に試合で投げて、抑えたときは本当にうれしかったです」

 現在は、ダルビッシュ投手の他に、ソフトバンクホークスの石川柊太投手や読売ジャイアンツの戸根千明投手らとも交流があるなど、多くの選手たちがそのツイートをチェックしているという。