しかし近年、こうした流れに一石を投じるかのように、中国国内からもアイドルを発掘、育成しようとする動きが盛んとなってきました。
国産アイドルの先駆けとなった「TFBOYS」
中国のアイドル国産化の歴史において、その嚆矢(こうし)となったのは間違いなく「TFBOYS」でしょう。
TFBOYSは中国の芸能事務所によって2013年に結成された男性、というよりは少年3人組のアイドルトリオです。結成時のメンバーの年齢は12~13歳と幼かったのですが、結成から約6年経過した現在に至るまで第一線で活躍し続けており、中国における国産アイドルの第一号とみられています。
筆者の周りで一番アイドルに詳しそうな中国人OLにTFBOYSについて聞いたところ、「デビュー当初は歌もダンスも話にならない、ただの素人だった」そうで、ファン層も当初は同年代のティーンエージャーが中心でした。しかし年齢を重ねるにつれて徐々にパフォーマンスやトークの実力を高めていき、それに合わせて成人世代にもファンを広げ、現在のトップアイドルとしての地位を築いたとのことです。
TFBOYSの成功を見て、他の中国の芸能事務所もこぞって国内でのアイドルの発掘、育成に力を入れるようになりました。特に参考にされた点としては、「パフォーマンスの未熟な段階から露出させる」という売り出し方です。日韓アイドル業界ではおなじみの「研修生モデル」です。アイドルの成長をファンが見守り、共有するという手法が中国にも導入されたというわけです。
オーディション番組が大ヒット
中国で国産アイドルへの注目が高まっていた2018年初頭、前述のコンセプトに基づき、「偶像練習生」と「創造101」という2つのアイドルオーディション番組が相次いで始まりました。どちらも韓国のオーディション番組のパクリと言われていますが、視聴回数が数カ月で数十億回を超えるなど大変な人気番組となりました。