プロ2年目の北村拓己や、昨季に育成から支配下登録されたばかりの増田大輝といった若手内野手たちも一軍に引き上げるなど未完の大器たちにチャンスを与えることも怠っていない。

 もちろん彼らも当然ながら安泰ではない。ふと気がつくと一軍からいなくなった前出の若手メンバーは多数を占めており、今も二軍との激しいメンバー入れ替えが頻繁かつドラスティックに行われている。ちなみに現在の交流戦で正二塁手の座をつかもうと連日のスタメン出場で自慢の打力及び走力とともに必死のアピールを続けているのは、2年目の若林晃弘だ。

用意周到な「プランB」

 ビヤヌエバだけでなくアレックス・ゲレーロ外野手も大砲としてまったく計算が立たなくなる中、新5番には2年目の大城卓三捕手も台頭。大いに売り出し中で、一塁と捕手を兼務しながら勝負強い打撃でチームの白星量産に貢献している。思えば、この大城にも今年春の那覇二次キャンプで原監督は密かに「強化指定選手」として内角打ちの極意について密着指導を繰り返していた。大城は原監督と同じ東海大相模高、東海大のOBで先輩後輩の間柄だけに、うがった見方をする人から「潜在能力もないのに、単に〝えこひいき〟されているだけじゃないのか」との声も出ていたが、その批判が完全に的外れであったことを証明した格好だ。

 原監督としても「プランB」の急先鋒として後輩の大城が大暴れしてくれているのは、嬉しい限りであろう。

 野手陣だけではない。守護神候補だったクックの誤算でブルペンも崩壊危機だったが、代わって同じく東海大OBの中川皓太がクローザーとして抜擢され、その地位を築き上げている。入団以来長らくパッとしなかった4年目の25歳右腕・桜井俊貴もリリーフとして活路を見出すと、原体制のもとで今月から先発復帰を果たして2連勝。先発ローテーションに加わった。

 古参の球団関係者は、こうした原監督の「プランB」について「かなり用意周到だ」と評価し、こう続ける。

「大型補強で獲得してきた選手を特別扱いするわけでもなく、能力があれば代わって若い選手を中心に次々と上へ引き上げていている。もちろん不測の事態に備えて原監督が前もって『プランB』を準備していたからこその流れだが、それだけではない。

 巨大補強によって『もうチャンスがない』と諦めることのないように、若い選手たちに一軍への門戸を例年以上に大きく開けている。恥ずかしいことかもしれないが・・・。シーズン中のスタッフの入れ替えも含め一軍とファームの連携が、ここまで密になっているのはたぶん巨人の歴史上でも初めてなのではないか。それもこれも今年から3度目の指揮官就任となった原監督の経験値が大きくモノを言っているのだと思う」

 大型補強の成果がパッとしないとはいえ、それまで懸案事項となりそうだった若手の底上げを着実に敢行し、見事に成績へ反映させている。この勢いを保ち続け、原監督はシーズン最後にも笑顔を見せることが果たして出来るのか。注目したい。