独特の雰囲気を持つので、神殿や秘密基地のような場所として利用できるし、大がかりなセットを組むより手間がかからない。地下なのに火器を使える場所であることも、戦隊ものや特撮ものなど特殊な撮影に重宝される理由の一つとのこと。大谷石が持つ耐火性という特性がこんなところでも威力を発揮しているというわけだ。「セーラー服と機関銃(1981年公開)で薬師丸ひろ子さんが磔(はりつけ)にされたシーンもここで撮影されたんです」と、案内してくれた大谷資料館の鈴木洋夫館長が教えてくれた。
過去に行われた撮影時の写真は、坑内にも展示されている。著名な作品が多数あり、思わぬ発見があったりする。
このほか小中学生による合唱コンサートや、立体造形の展覧会などの催し物も行われている。立体造形(オブジェ)の一部はそのまま坑内に残されていてライトアップされ、地下空間の雰囲気を盛り上げている。
以前は地上からは存在がわからない、という特性を生かし、“秘密工場”として利用されていたことがあるのだが、それは後編で。
同じ敷地には、しゃれた内装のショップとカフェもある。ショップには大谷石をモチーフにしたインテリアグッズが並び、表参道にいそうなカッコイイ店員さんのいるカフェの床は、大谷石が敷かれている。「資料館」と聞いてイメージする地味な施設とはだいぶ印象が違う。手間と費用をかけて「観光スポット」にしようという強い意気込みが感じられる。
“餃子の町”の足下にある空間
大谷資料館(大谷石地下採掘場跡)があるのは、栃木県宇都宮市大谷町。古くから建築物の外壁や土蔵などに利用されてきた大谷石(おおやいし)の名前は聞いたことがあるかもしれない。
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JR宇都宮駅から北西に直線距離でおよそ7km。市街地からそれほど遠くないが、大谷石を算出する山に囲まれた一帯だ。地上に露出している大谷石は一部だけで、地中には東西に約8km、南北に約37kmにわたって分布している。