康長官のこの発言に対し、『朝鮮日報』は、「『司法府の判断を尊重する』という従来の立場からさらに一歩踏み込み、『歴史と人権問題解決の次元で日本政府から、被害者が納得できるような措置を取るべき』という意味」と解釈した。

 韓国No.1の経済専門紙『毎日経済』は、「裁判所が決定したことだから、外交部は知ったことじゃないという責任回避と傍観の姿が感じられた」と批判。さらに「万が一、日本の報復措置で日本の部品を使用する国内工場の生産活動が中断されたり、ビザ発給中断と不法滞在者の調査で日本留学生や生業に携わっているわが国民が強制送還されたりする事態が発生したら、誰がどう責任を負うのか。また、被害者の治癒とは、最高裁判所の判決どおり日本企業から1人当たり1億ウォンずつ強制的に金を取れば済むものだろうか」と、怒りを発した。

韓国最高裁、三菱重工に賠償命令 元徴用工・挺身隊訴訟

第二次大戦中に強制労働をさせられたとして元徴用工らが三菱重工に損害賠償を求めた訴訟で、ソウルの韓国大法院(最高裁)に向かう原告団。この裁判で大法院は三菱側の上告を棄却し、同社への賠償命令が確定した(2018年11月29日撮影)。(c)Jung Yeon-je / AFP〔AFPBB News

 最近、韓国裁判所が日本企業から差し押さえた資産に対する現金化の手続きに入ったことで、日本側がさまざまな経済報復を検討しているというニュースが韓国社会にそのまま伝わってきている。文在寅政権が推進する「所得主導成長」による逆効果で韓国経済が満身創痍になりつつある中で、日本の報復が与える影響に対する韓国メディアと国民の憂慮は想像以上に大きい。

「日本の政治家がこの問題を国内政治に利用している」

 だが、文在寅大統領は頑なに傍観者的なスタンスを維持している。日本側の協議要請に対して4カ月以上応じていないだけでなく、5月2日には「日本が政治的に利用している」と不満を吐露した。9日に放送された就任2周年記念のインタビューでも「歴史問題が両国関係の足を引っ張っているが、それは韓国政府が作ったのではない」「日本の政治家たちがこの問題を国内政治に利用しているため、歴史問題が未来志向的な発展の邪魔をしている」と再び、関係破局の責任を日本へ振った。

 問題を「人のせい」にするのは、問題解決の方法がない時にあらわれる自己防衛術だ。文在寅大統領は、あまりにも悪化してしまった韓日関係を解決する方法がないことを自白したいのかもしれない。