中村:そう。味方で一番うまかったのが福西(崇史)さん。ニアに飛び込むのがうまい。もちろん「せーの」で走ったら、勇蔵とかボンバーだけど、浮いたボールに対して、軌道を読んで自分がどこでジャンプするか、シナリオをしっかり体で表現できるのは福西さんだったかな。運動能力が高い人ってそうなんだなって思ったよね。
――蹴るときにそのくらいまでイメージ、理想の形を思い描いているわけですね。
中村:そうですね。ニアで潰れながらだと大黒(将志)が上手かったです。プルアウェイ(プル&アウェイ)するとかね。
サッカートレンドが変えた「トップ下」の役割
岩政:俊さんは、本に「トップ下」についての思いを書かれていましたけど、現代のサッカーだとその役割が大きく変わってきてると思うんですね。
中村:だね。
岩政:今の潮流だと、トップ下はサイドからうまく入り込んだり、ゴール前に顔を出したりっていう役割が作られてるところもあると思うんです。それってサッカー界を俯瞰して見たときにどう感じられてるんですか。つまらなかったりしますか?
中村:いやいや。やっぱこうなんだよな、くらいかな。俺みたいなタイプはいらなくなったなって(笑)。
岩政:いやいやいや(笑)。
中村:2トップが1トップになって、それはイコール、(昔の)トップ下がいなくなる形だよね。4-2-3-1だとしても、トップ下にいる選手はいわゆるゲームメーカーよりも、ボランチっぽいゲームメーカーで、「労を惜しまない人」みたいな感じでしょう。
岩政:確かに。そうじゃないやり方もあると思われますか?
中村:(システムは)ぐるぐる、ぐるぐる回るじゃん。例えば、また5バックっぽいチームが出てきてるけど、その数年前にはダイヤモンド(セントラルMFが縦に位置する)が注目された時期があった。ドイツとかね。で、最近ではグアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督)が出てまた変わってきて・・・、でもまあ、ここ10年はグアルディオラで回ってるか。
岩政:本当にそうですね。
中村:結局、自国のリーグの強いチームがスタイルの象徴になっていく。そうすると、そこにまずどうやって対応するか。その次に、追いつこうとして真似をする・・・って、変わっていくのは自然な流れだよね。だから別に(一昔前の)トップ下が減ったから、つまらないとかそういうのは・・・、ちょっとだけつまらないくらいで(笑)。いや、それは冗談で、もっとやれるって見せたいけどね。だって今、(グアルディオラが率いるマンチェスター・シティは)ダビド・シウバと、ベルナルド・シルバが一緒に出てるでしょ?
岩政:ポルトガルの。左利きで小さいけど攻撃的ですよね、ベルナルドは。
中村:そうそう。MFでさ、このふたりが同時に起用されるって今までのサッカーには絶対なかった。もちろん、それはトップレベルだからというのはあっても、普通はどっちかでしょう。
岩政:確かにそうですね。