このシステムのコンテナを積載した貨物船からLORAを発射する試射の模様が公開されており、コンテナ発射型ミサイルシステムの実用性は証明されている。すなわち、Club-KやYJ-18Cは十分実用に耐える兵器であると考えられるのだ。

アメリカ海軍関係者たちが危惧する事態

 YJ-18Cのコンテナを積載した貨物船は、たちどころに対艦攻撃力あるいは対地攻撃力を持った準軍艦と化してしまい、中国はYJ-18Cコンテナを数個積載した数百隻の貨物船を手にすることができる。

 アメリカ海軍関係者たちがYJ-18Cへの警戒を強めているのは、それらだけが理由ではない。

 中国は、「海のシルクロード」の掛け声のもと、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、セイシェル、そしてオーストラリアやギリシャでも貿易港の運営権を獲得したり、貿易港そのものを建設したりしている。また、パナマをはじめ中南米諸国やカリブ海諸国でも、貿易港の運営権を手に入れたり、貿易港の拡張や建設に乗り出す動きを活発化させている。

 このように中国がコントロールする世界中の港湾には、YJ-18Cコンテナを積載した中国貨物船が、アメリカ海軍の監視網にかかることなく自由自在に入港・出港することができる。中国軍がそのような拠点にYJ-18Cコンテナを前方集積しておくことも可能になる。そうなると、前方集積してあったYJ-18Cコンテナを積載した貨物船からミサイル攻撃を敢行することも、可能になるのだ。

 米海軍関係者たちの心配はそれだけに止まらない。

 そもそも、膨大な量のコンテナが四六時中行き交っている国際貿易港にYJ-18Cコンテナが運び込まれても、そう簡単に発見されることはない。たとえばシアトル港にYJ-18Cコンテナが陸揚げされたらどうなるか。そこから目と鼻の先に位置する、米海軍でも最重要基地の1つであるバンゴール戦略原潜基地の上空に向けて、電磁パルス波弾頭が装着されたYJ-18Cミサイルが発射されることも起こり得る。そのときアメリカの核抑止力は壊滅的打撃を受けてしまうことになるのだ。