(花園 祐:ジャーナリスト)
高校野球の名門校、高知商業高校の野球部員が昨年(2018年)12月、同校のダンス同好会が開いた有料発表会にユニフォーム姿で参加しました。このことを日本高等学校野球連盟(以下「高野連」)が問題視し、同校野球部長の処分を検討したことがニュースとなりました(最終的に処分は見送られました)。
高野連が処分を検討したのは、ユニフォームを着た球児の有料イベントへの参加が、高野連が定める「日本学生野球憲章」(以下「野球憲章」)の「商業利用」の禁止に抵触する、という理由からでした。
日本学生野球憲章にはこうあります。
第2条(学生野球の基本原理)
[4] 学生野球は、学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない。
高野連は学生野球を教育活動の一環と位置付け、全国高等学校野球選手権大会(以下「甲子園大会」)や球児たちの商業利用を厳に慎むという方針を長年とり続けてきました。しかし、そうした高野連の方針がある一方で、高校野球の試合を中継する放送局が試合映像を収めたDVDソフトを製作し、それらが店頭やネットなどで販売されています。
放送局のDVD製作・販売行為は学生野球の商業利用に当たらないのか? 当事者である高野連と民放2社に見解を尋ねてみました(そもそも教育活動の一環である学生野球大会の主催者に、なぜ民営企業の新聞社が名を連ねて堂々と商業利用しているのか筆者にはまったく理解できないのですが、今回はその件には触れません)。
収益の9割は入場料
本題へ入る前に、甲子園大会がどのように運営されているのか、高野連が公開している決算報告書の収支状況を見ながら説明しましょう。
今回参照したのは、高野連サイト上で公開されている2017年度(2018年2月28日期)決算報告書です。その中の「高校学校野球関連事業」セグメントを査閲しました。
まず全体収支は、同セグメントの経常収益が約7億6880万円であるのに対し、経常支出は約7億8640万円と約1760万円の赤字となっています。ただ前年の2016年度は約9100万円の黒字であるなど年によって変動があり、常に赤字というわけではありません。