リビアで拡がる反体制運動。時々刻々変化する状況を伝えるニュース映像には、カダフィ大佐の鬼気迫る演説が「エキセントリック」と表現され付け加えられている。

謎だったカダフィ一家の実態が次々明るみに

【写真特集】リビアの最高指導者、ムアマル・カダフィ大佐

ウガンダ・カンパラで、アフリカ統一機構(現アフリカ連合)のサミットに出席した頃のリビアの最高指導者ムアマル・カダフィ大佐(1975年8月4日撮影)〔AFPBB News

 その一方で、後継者とも目されていた次男サイフ・アル・イスラムは落ち着き払ってアメリカンスタイルの記者会見を行っている。

 7男1女と子沢山のカダフィ大佐には、ほかにも、個人的に一説には100万ドルとも言われる高額のギャラを支払って、人気歌手マライア・キャリーに家族の新年会で歌わせていたという四男もいる。

 また、スイスで暴力沙汰を起こし訴追された過去のある五男といったお騒がせ息子もいて、タブロイド紙がその過去をほじくりまわしている。

 今回の民主化デモによって、謎の多いカダフィ家の実態が徐々に明らかになってきている。そこには、反欧米姿勢を長年続けてきたカダフィ一族も、既に欧米経済にどっぷり浸かり込んでいる現実が見て取れる。

 三男アル・サアディは、プロサッカー選手としてかつてはイタリア・プロリーグ、セリエAのペルージャに在籍していた。我らが中田英寿のいたチームである。

米国で実業家となった三男

<サッカー セリエA>カダフィ大佐の息子がサンプドリアとの契約に合意 - イタリア

イタリア1部リーグ・セリエAのサンプドリアと契約したアル・サアディ・カダフィ〔AFPBB News

 しかし、活躍シーンを見せることもなく引退、今では「復交」なった米国で、ロサンゼルスを拠点とする「ナチュラル・セレクション(Natural Selection)」なる映画製作会社を通して投資も手がける、形の上では立派な実業家である。

 国際社会はついにカダフィ一族への制裁を開始し、米国にある一族の資産も凍結されるようだから、今後、映画製作の仕事はどうなるのであろうか。

 そのアル・サアディが初めてエグゼクティブプロデューサー(Executive Producer)として名を連ねた映画『エクスペリメント』(2010)は、昨年末日本でも公開された話題作である。

 一体何の「エクスペリメント(実験)」なのかと言うと、日当1000ドルの高額報酬につられ集まった人々に看守と囚人の役割を与え、閉鎖空間の中でどんな行動を取るようになるか観察分析するという集団心理の研究実験である。