稀勢の里引退を機に各界の体質改善を
とはいえ、ここまで目くじらを立てる横審のやり方には違和感を覚えざるを得ない。ここ最近、白鵬が多用するかち上げや張り差しに「横綱らしくない」と苦言を呈したり、立ち居振る舞いにも枚挙に暇がないほどイチャモンをつけたりしている。
だが冷静に見れば反則でも何でもないのだ。もし、そこまで気に食わないならルール改正でもすればいいのである。しかもかち上げや張り差しは他の力士たちも当然駆使するケースがあり、あの、稀勢の里だって晩年は多用していた。そうであるにもかかわらず横審は見てみぬフリをし、鬼の首を獲ったかのように白鵬だけをワーワーと“集中口撃”しているのだから開いた口が塞がらない。こうした白鵬への“集中口撃”に対する現状には協会内部からも「やり過ぎ」との意見が実は噴出し始めている。
「横審が白鵬をあれだけ標的にするのは、どうやら今の時点で帰化しようとしていないことへの不満もあるようだ。それにしても、これだけ数々の偉業を成し遂げてきた大横綱へのリスペクトが横審には余りにもなさ過ぎる。これでは一体どちらが格上なのか、見ている側も混乱してしまう。近年、横審には『何様なんだ』という批判が数多く寄せられているのも無理はない。白鵬だって、これだけブッ叩かれ続けて余計に意固地になってしまっている。横審に対してこれ見よがしになっているからこそ、あえてかち上げや張り差しを多用したり、わざと不遜な態度を取ってヒールっぽく見せたりしているという話も実際のところ聞こえてくる。これでは何のための委員会なのか。まったくもって本末転倒だ」とは前出・協会関係者の弁だ。
今のままだと私利私欲でうごめく大相撲の前途は暗いと言わざるを得ない。稀勢の里引退は見直しを図る機会ととらえ、もっと風通しが良く透明性の高い角界を構築していかなければ相撲人気は瞬く間に急落してしまうだろう。