ロシア、トランプ氏の米ロ首脳会談中止決定は「遺憾」

ドイツ・ハンブルクで開催されたG20首脳会議に合わせて会談を行うドナルド・トランプ米大統領(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領(2017年7月7日撮影、資料写真)。(c)Mikhail KLIMENTIEV / SPUTNIK / AFP〔AFPBB News

制裁解除の理由は
「労働者」「経済」「中国」

 「米国財務省外国資産管理局(以下OFAC)はエンプラス、ルサール、ユーロシブエネルゴに対する制裁を解除する」

 これはOFACがロシアのアルミ王デリパスカ氏が所有する3社に2018年4月に課した経済制裁を解除するという決定で、今年1月27日に発表された。

 3社とはルサール社(アルミ生産)、エンプラス社(ルサール社の株式を保有)、ユーロシブエネルゴ社(電力)である。

 あまり知られていないが、今回の制裁解除劇の立役者は1人の英国人である。名前はグレゴリー・レオナード・ジョージ・バーカー(以下バーカー氏)。

 男爵の爵位を持つ英国保守党の議員であり、2010~2015年までデイビッド・キャメロン政権でエネルギー・気候変動担当大臣を務めた。

 1966年生まれのバーカー氏は広告会社ブランズウィック・グループ(Brunswick Group)のアソシエイト・パートナーとして働いたのち、1990年代後半にロシアの富豪アブラモビッチ氏(英プレミアリーグ・チェルシーFCのオーナーとしても有名)と働くためロシアに渡っている。

 それから約20年後、アブラモビッチ氏の推薦もあり、2017年10月ロシアのアルミ王デリパスカ氏はバーカー氏をエンプラス社の取締役会議長に任命した。その数週間後、エンプラス社はロンドン株式市場に上場した。

 しかし2018年4月、冒頭で述べたようにエンプラス社がOFACの制裁を受けたことで、バーカー氏の業務内容は大きく変化した。

 エンプラス社を制裁から救うべく、バーカー氏は早速全体戦略を立てる。

 それは「悪い奴(デリパスカ氏)を懲らしめ、雇用(従業員)を守る」というシナリオだった。そして2018年5月にはこの分野で豊富なロビイング経験を有するマーキュリー(Mercury)社を起用した。