制裁解除の理由は
「労働者」「経済」「中国」
「米国財務省外国資産管理局(以下OFAC)はエンプラス、ルサール、ユーロシブエネルゴに対する制裁を解除する」
これはOFACがロシアのアルミ王デリパスカ氏が所有する3社に2018年4月に課した経済制裁を解除するという決定で、今年1月27日に発表された。
3社とはルサール社(アルミ生産)、エンプラス社(ルサール社の株式を保有)、ユーロシブエネルゴ社(電力)である。
あまり知られていないが、今回の制裁解除劇の立役者は1人の英国人である。名前はグレゴリー・レオナード・ジョージ・バーカー(以下バーカー氏)。
男爵の爵位を持つ英国保守党の議員であり、2010~2015年までデイビッド・キャメロン政権でエネルギー・気候変動担当大臣を務めた。
1966年生まれのバーカー氏は広告会社ブランズウィック・グループ(Brunswick Group)のアソシエイト・パートナーとして働いたのち、1990年代後半にロシアの富豪アブラモビッチ氏(英プレミアリーグ・チェルシーFCのオーナーとしても有名)と働くためロシアに渡っている。
それから約20年後、アブラモビッチ氏の推薦もあり、2017年10月ロシアのアルミ王デリパスカ氏はバーカー氏をエンプラス社の取締役会議長に任命した。その数週間後、エンプラス社はロンドン株式市場に上場した。
しかし2018年4月、冒頭で述べたようにエンプラス社がOFACの制裁を受けたことで、バーカー氏の業務内容は大きく変化した。
エンプラス社を制裁から救うべく、バーカー氏は早速全体戦略を立てる。
それは「悪い奴(デリパスカ氏)を懲らしめ、雇用(従業員)を守る」というシナリオだった。そして2018年5月にはこの分野で豊富なロビイング経験を有するマーキュリー(Mercury)社を起用した。